1744.2012年2月21日(火) 光市母子殺害事件で元少年の死刑確定

 昨日最高裁の差し戻し上告審で元少年の死刑が確定した。山口県光市で若い妻と幼児を殺害した殺人、並びに強姦致死などの罪に問われていた被告の、事件発生以来13年ぶりの刑が確定した。これまでの裁判では少年法の制約もあって、残虐な事件だったにも拘わらず、犯行を犯した18歳1ヶ月の少年に、1審、2審とも極刑を課されることはなかった。少年法では、18歳未満の少年への死刑適用を禁じており、犯行時にこの少年が18歳1ヶ月とやっと18歳の少年法のしばりから解かれたばかりで、直ちにこの少年を極刑の対象とすることに論議が分かれていたからである。実際本上告審でも4人の裁判官のうち、1人が最後まで死刑を宣告することに反対したという。

 それを覆したのは被害者の夫であり父でもあった、当時23歳の本村洋さんの怒りと熱意、そして揺るぎない正義感だった。妻子を殺害された本村さんは悲しみに堪えて地道に、かつメディアをさりげなく上手に利用して裁判制度の治外法権的な不透明な範囲に疑問を投げ、その不条理を訴えたことが、一理ある彼の論理を通させたと言える。1審と2審の結果に不満を憶えた本村さんは、原告となって最高裁へ上告した。平成18年最高裁は「犯行時の年齢は死刑回避の決定的事情とまではいえない」として審理を広島高裁へ差し戻した。20年4月差し戻し後の広島高裁2審は「極刑回避の事情はない」として死刑を言い渡した。

 昨日の最高裁小法廷は「被害者の尊厳を踏みにじった犯行は冷酷、残虐で非人間。被告は犯行の故意や殺害態様などについて不合理な弁解を述べて、真摯な反省の情をうかがうことはできない」と指摘して、「少年だったことや、更生の可能性もないとはいえないことなど酌むべき事情を考慮しても、刑事責任はあまりにも重大」と述べ、広島高裁の2審判決を支持して死刑判決は止むを得ないとした。

 この13年間に夫だった本村洋さんの取った言動は、多くの人々の同情を買い、世間に大きな衝撃を与えた。いかに相手が少年とはいえ、愛する妻子が獣のような殺され方をされ屈辱と恨みは頂点に達していただろう。昨日の最高裁判決後、本村さんは結果には満足しているが、喜びはないと語っていた。常に冷静なのである。行動を起こす素養もあったかもしれないが、家庭の平和と個人のプライドを踏みつけにされた、辛く厳しい試練が若者を逞しく鍛え上げたのだ。

 この若い本村洋さんの行動を見ていて、根気強く逞しい若者の正義感に心を打たれた。奇を衒うような素振りは微塵もなく、妻子を守って挙げられなかった負い目を償おうと必死に戦った潔さに感動すら憶えた。

 可能性はあまりないとは思うが、本村さんのような人が、もしこれから政治家になってもらえれば、国民が期待する以上の仕事をしてくれるのではないかと感じたほどである。

 少なくとも日に日に劣化している今の国会議員より、本村さんの方が遥かに立派な業績を残してくれるであろうことは間違いないように思う。

2012年2月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com