今朝の日経新聞別紙が新卒広告特集と銘打って、来春卒業予定の大学生を対象にした就職希望企業調査の結果を公表している。例年これに似た調査が行われるので、ある程度人気企業やその傾向は分かる。ところが今朝の記事によると、人気企業ベスト10は10位のサントリー以外はすべて金融及び保険会社である。つまり役所願望と併せて完全に安定志向なのである。夢も面白みもありゃしない。この傾向は数年前から見られるようになった。これこそが円高のせいばかりにするが、日本企業が中国や韓国企業に追い越されていく遠因ではないだろうか。その意味では病根は根深いと考えざるを得ない。
若者が企業に求めるのは、①規模が大きい、②一流企業、③安定している、である。中には、社風が良い、とか社会貢献している、の回答もあるようだが、完全に安定志向である。どうも若者らしいチャレンジ精神とか前向きな姿勢が感じられないのは、時代の空気だろうか。そう言えば、近年勤務でも留学でも海外志向の若者が減りつつあるというし、かつて私がやったようにひとりで海外へ武者修行に出かけるような若者もほとんど見かけない。
あれほど企業規模が大きく、人気もあった自動車メーカーも200社の中にやっとトヨタだけが45位に顔を出している程度である。一昔前には‘安心・安全’の代名詞だった重厚長大型企業のメーカーですら今の学生にはすっかり色褪せて見え、メーカー全体が完全に敬遠されてしまったようだ。
その原因としては、前記のように時代の流れもあるだろうが、若者の興味、趣味、考え方、ゲーム感覚、家庭環境、社会環境、将来への絶望感等々の変化により、企業に対する見方と将来に対する展望が大きく変わってきているのではないだろうか。問題は今の傾向が益々内向きになり、外部との接触を断ち切り、他人とのふれあいを求めなくなる気風が強まっていくと、人間としての成長性にひずみや問題が出てくると思う。こうして、学生たちは植物人間化していき、闘志を表に出さなくなり、ちまちました人間ばかりがしゃしゃり出てくるようになるのではないか。
これでは益々つまらない社会になる。果たしてこんなことで良いのだろうか。