今年は世界各地で国のトップリーダーを選ぶ選挙が行われる。その最大の焦点になっているのは、言うまでもなくアメリカ大統領選挙で、すでに共和党では今年に入って候補者選出選挙をスタートさせている。あとは4日投票のロシア大統領選挙、5月のフランス大統領選挙、そして残り任期1年足らずとなった韓国大統領選挙、更に中国では国家指導層が一斉に交代する。そんな熾烈なスケジュールの中で昨日大統領選挙へ出馬したロシアのプーチン首相が、朝日新聞を始めヨーロッパ、カナダの主要紙編集トップと記者会見を行い、日本に対しては唐突に懸案の北方領土問題解決へ向けた誘い球を投げてきた。
プーチン首相にとっては1期首相を務めたが、3期目の大統領職を目指している。まず、当選は間違いないと見られている。当選の暁には憲法を改定して大統領在任期間を現行の5年から6年に伸ばして、その上で更にもう1期大統領を務めようとやる気満々なのである。つまり、この次の選挙で当選すれば、首相前の2期10年と合わせて通算22年もの長期間に亘って、トップの座に君臨することになる。
そのプーチン首相がこの緊急な時期に日本に牽制球を投げてきた、その意図についていろいろ憶測や詮索が飛び交っているが、問題解決へ向け信頼関係に基づいた話し合いなら、拒む理由はないと思う。但し、1945年8月日本が武器を放棄して無条件降伏したにも拘わらず、まだ戦闘中であると強引に主張して北方領土を占領し、不遜にも大東亜戦争の戦利品と欺瞞し占領し続けている北方領土をロシアがそう簡単に手放すはずがない。プーチン首相は好きな柔道に喩えて、両国とも引き分けを目指したら良いとの提案をしているようだが、本音がどこにあるのかしっかり見極める必要がある。
2年前にメドベージェフ現大統領が北方領土を視察して、自国の領土であることをPRして日ロ関係がぎくしゃくしている現状に鑑みても、プーチン首相の言い分を素直には受け入れがたい。プーチン首相の提案には自分自身何らかのアピールを狙った、恣意的な意図があるのではないかと思えてしようがない。
さて、中国も今日尖閣諸島周辺の71の島々に不意に中国名を命名した。もちろん尖閣諸島の無人島にも中国名を付した。これにはわが国が周辺の39の無人島に日本名を付けたことに対する仕返しのようだが、早くから日本の出方に備えをしていたらしい。この国も指導者層が代わった場合、今でも手ごわい態勢が一層難しい要求を持ち出してくる強面の政権になるのではないか。中国はいよいよ覇権国家への階段を一歩一歩上り始めたようである。
韓国については、相変わらず竹島問題が懸案事項になったままで解決の糸口が見つからない。それどころか気がかりなのは、来年2月に退任する李明博大統領の姿勢に、昨年後半辺りから露骨に反日的な言動が見られるようになってきたことである。特に昨年末ソウルの日本大使館前に戦争慰安婦像を建てたことを擁護する言葉について抗議した日本政府に対して、このままだと第2、第3の慰安婦像が建つと恫喝するような言辞を弄したり、数日前には非礼にも日本戦犯企業と称するリストを発表したり、その急激に過激となった言動はこれまでの日本に対するソフトだった言動を考えるととても理解できない。再選が認められないとなったら、これまで胸に収めていた反日感情が一気に噴き出したと思えるパフォーマンスである。李大統領は大阪育ちということもあって、日本人にとっては比較的ソフトな親日家というイメージが強かったが、退任後自らへの国内の評価を慮ってかこの時期になって反日韓国人の心情を斟酌する態度を見せて、国内の韓国人の本音に共鳴する姿勢を見せて評価を高めようとしているのではないだろうか。いずれにしても国家元首あたりになると、したたかで本心は計り知れない。
国会対策だけで頭がいっぱいの日本の総理大臣には、各国の元首のように、時には冷徹でしたたかな行動はとても取れまい。われわれ国民からすれば、わが国の首相や閣僚はこれだから頼りにならないということになるのかもしれない。