福島第1原発から漏れ出た放射線物質の除染作業や、それを浴びた瓦礫の処理について中々思うように作業が捗らない。そこへ先日民間の委員会が菅前首相、官邸周辺、原子力安全委員会、そして東京電力を槍玉に挙げ、それぞれの間で大いなる齟齬をきたしていた内部事情を公表した。更に事故後に行った彼らの対応は効率的ではなく、ほとんど評価することができないとまで厳しく断罪した。こと事故処理の対応に関しては、政府、及び現場で双方がともに混乱に陥り、果断的な手を打てなくなっていたのだ。事態は今なお改善されていない。被災者や被災地への同情の声こそ上がれども、放射性物質を除染した瓦礫さえ引き取ろうとする自治体は数少ない。果たしてどこまで被災地をサポートして事態を改善することができるのだろうか。
そんな時に菅前首相が原発事業からの撤退を公言したにも拘らず、細野・原子力担当相は原発の再稼動を匂わせる発言をした。「舌の根が乾かぬうちに」とはこういうことを言うのだ。細野大臣の腹の内は、経済界からの要望を聞き入れて消費増税への理解を得たいというのが本音だろう。結局絶対的な電力不足を言い訳に、世論を原発再稼動へリードしたかったのだろう。
それなら電力不足や節電を言う前に、現在野放しになっている電力の無駄遣いをどうして抑える方向に神経を使わないのだろうか。どうもチグハグである。
例えば、昨日、一昨日と西武所沢球場で行われたプロ野球オープン戦はナイターだった。なぜこの時期にわざわざ昼間できる野球を、使用しなくでも済む電力を大量に消費してまで夜間に行う必要があるのだろうか。プロ野球界は昨年シーズン開幕前に世論の猛反発を受けたことに対して、多少の配慮は示したが、電力を大量に消費することに対して懲りてもいないし、まったく反省もしていないのだ。とりあえず節電を考えて、開幕を伸ばし、極力ナイターからデーゲームへ変更するよう試みた。喉元過ぎた今年は、そんなことはお構いなしに開幕前のオープン戦から堂々と電力の無駄遣いをやっているのである。それを誰も咎めようともしない。その挙句が一方で10%以上の電力料金値上げである。東電はどうしてプロ野球界に、簡単にできる電力消費量の節約をお願いすることをしないのか。その代わりに、東電社長の傲慢な値上げ宣言である。「私たちには値上げする権利がある」だと?
そこにもここにもおかしなことが多すぎる。どうして上から下まで首尾一貫しないのだろうか。なぜ人によって言うことが異なったり、同じ人が場所を代えると言うことが変わってくるのだろうか。
電力業界の周囲には、一般人の常識では及びもつかない非常識と深い闇が取り囲んでいるからではないか。
さて、話題になっていたロシア大統領選挙の結果は、予想通り64%の得票率を得たプーチン首相が圧勝し、大統領に返り咲くことになった。戦前盛り上がってきた反プーチンデモを完全に押さえ込んだ。5月に就任し6年間の任期に就く。現在のメドベージェフ大統領は、プーチン首相が去った首相職に就く。何のことはない。まるで同族会社と変わらないではないか。大統領と首相が立場を替えただけである。でも、これから厳しい反対派の動向を注視しながら、プーチン流の強圧的な政治が展開されるのだろう。