今日午後東京千代田区にある国立劇場で開かれた東日本大震災1周年追悼式に天皇・皇后両陛下が出席された。天皇の犠牲者を悼む言葉の前に野田首相が誓いの言葉を述べた。それは3つの点に要約される。①復興を1日も早く成し遂げること、②震災の教訓を未来に伝え語り継いでいくこと、③復興を通じた日本の再生という歴史的な使命を果たすこと、である。
天皇は犠牲者への哀悼の言葉に併せて、遺族や、被災者と被災地のために働いてきた人々やボランティアの尽力をねぎらったり、世界中からの支援者に感謝の言葉を語られた。
今日現在震災による死者、行方不明者は1万9千名を数えるが、そのほかに災害関連死亡者が千名を超えるので、犠牲者は2万名を超えたようだ。
今朝から各テレビ局は震災地からの生中継を交えて、震災一色である。ところが、アメリカでは日本の震災に対する同情や共鳴には強いものがある反面、シーラ・スミス・アメリカ外交問題評議会上級研究員の「震災によって日本政府は厳しい試練に晒された。初動こそ阪神大震災に比べれば迅速で効果的だったが、復興にかかる法律、予算、原発の保安点検に関する対応は遅く、津波で破壊された地域の再興はまだ終わっていない。国民の要請と政府の対応の間に深刻な隔たりが生じ、人々の政府に対する信頼は著しく傷ついている」のような指摘もある。震災発生当初から、原発事故に対して多大な関心を抱いてきたアメリカ政府は、軍による「トモダチ作戦」を行いながら日本を支援してきた。日本国民にその気持ちは通じたが、その一方で日米政府間にどうも齟齬を来たしたとの印象が強く、何となくギクシャクした印象は否めない。その辺りはアメリカにとって正確な情報が得られなかった不満と、日本の事故後の対応に納得のいかない気持ちを伝えたかったからではないか。今朝の朝日新聞を読むとその点がよく分かる。
中国政府の見方も若干見込み違いと計算違いがあったようだ。震災発生と同時に日本へ支援を行ったが、まだ尖閣諸島沖の漁船衝突事件の影響から日中間に緊迫した状態が続いていたこともあり、中国政府は双方の国民感情を回復するチャンスと捉える考えもあった。だが、震災外交で関係改善を図ろうとする中国政府の試みは充分達成されなかったと見られている。それは多くの国々が支援活動を続ける中で、中国が思うように強い印象を残せなかったことと、中国政府より中国世論が被災への同情より放射能汚染への懸念に移っていったことが背景にあると見られている。その点では、南京大虐殺を否定した河村たかし・名古屋市長の発言で再び緊張が高まってきた日中間には再び緊迫した空気が流れている。結局中国の支援は、日本との間の溝を埋めるようなことにはならず、中国政府の願っていた方向には向かわなかったようだ。残念なことである。それと同時に、如何に善意の援助であっても双方の気持ちを通わせるのは難しいものだとつくづく感じた。