1769.2012年3月17日(土) 文人ゆかりの地と記念館

 鉄道各社の春のダイヤ改正に伴い、今年も悲喜こもごものニュースが聞かれる。昨日JRでは東海道新幹線300系「のぞみ」が20年間走行していた表舞台から姿を消した。同時に青森から大阪まで日本海沿線を走っていた寝台特急「日本海」も舞台から去った。それぞれの出発駅と到着駅における鉄道ファンの感情移入した熱狂ぶりには恐れ入る。

 また、小田急でも1987年開業60周年に登場したロマンスカー「HiSE」が25年間のお務めを終え引退した。同時に「RSE」も幕引きをした。一方で東武鉄道は5月22日の東京スカイツリー開業を前に由緒ある「業平橋」駅をまったくセンスの感じられない「とうきょうスカイツリー」駅に駅名変更した。由緒のある名前「業平橋」をいとも容易くお祭り騒ぎのような名前に替えてしまった。よくもここまで悪乗りしたと思える駅名変更ではないか。それでも恐れ多くも80年以上もの長い間名称を名乗っていた在原業平に申し訳ないとでも思ったのか、新駅名の脇に「旧業平橋」と付けたようだが、東武鉄道の文化的センスの欠如には呆れかえる。今後も近所に新名所が誕生すれば、またえげつなくその名を騙るのではないだろうか。

 さて、今朝の日経紙付録「NIKKEI」一面に「訪ねてみたい文人ゆかりの里」10傑が掲載されている。それを見ているとそれら文人のイメージが浮かんできて何となく訪ねてみたい気持ちになる。因みに、①太宰治記念館と青森・五所川原、②宮沢賢治記念館と岩手・花巻、③子規記念館と松山、④室生犀星記念館と金沢、⑤森鴎外記念館と島根・津和野、⑥池波正太郎記念文庫と東京・浅草、⑦小泉八雲記念館と松江、⑧藤村記念館と岐阜・中津川、⑨旧江戸川乱歩邸と東京・池袋、⑩松本清張記念館と福岡・小倉など名だたる文人ゆかりの記念館がずらっとリストアップされている。番外として京都宇治市の「源氏物語ミュージアム」や、三重県伊賀市の芭蕉翁記念館、松阪市の本居宣長記念館も挙げられている。私自身は仕事の合間に、③子規記念館、⑦小泉八雲記念館、⑩松本清張記念館ぐらいしか訪ねていないが、今でも建物ははっきり憶えている。

 ⑤森鴎外記念館が津和野市内にあるものとは別に、JR小倉駅近くにも名称は正確に覚えていないが、日本家屋風の森鴎外記念館がある。鴎外が軍医として小倉に勤務していた頃に住んでいた旧宅のようだ。10年ぐらい前に見学した時鴎外の孫で、慶応日吉時代にフランス語を習った山田ジャク氏(このフランス語ジャックに準えた漢字が難しくPCでは見つからない。「爵」の「ノ」と「ツ」を「木」に差し替えた字)について係員と立ち話をしたことがある。また、東西の壁崩壊前に、その当時東ベルリン側のブランデンブルグ門近くにあった鴎外記念館を訪ねて、ドイツ人女性研究家から解説してもらったことがある。その時件の女性は「舞姫」のヒロイン・エリスについて熱を込めて話してくれたことが懐かしく思い出される。聞くところによると今秋都内文京区にも鴎外記念館がオープンするという。また、かつて訪れたことのある馬籠村については、生憎その時時間がなく見学できなかったが、⑧藤村記念館には「夜明け前」に関する貴重な資料があって一見の価値があると薦めるコメントがあったので、ぜひ一度訪れてみたい。特に中学生の頃読んで感銘を受けた「破戒」や、愛読書のひとつ「夜明け前」の雰囲気が感じられるところだけに興味がある。

 最近は文豪の長編小説を読む機会が大分減っているが、こういうコラムを見ると知らず知らず文豪と彼らの著作への想いが募ってくる。

2012年3月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com