消費税値上げで国会は与野党間、また民主党内で議論にならない議論が連日8日間に亘って繰り返されているがまったく前進せず、その他にもあまり明るい話題はない。防衛問題は、田中直樹・防衛大臣のお粗末な答弁と対応だけが格好の話題になっているが、沖縄の米軍基地移設問題もデッドロックに乗り上げてしまった。僅かに米海兵隊の沖縄からの移転問題が日米防衛担当部署の間で密かに話し合われているようだが、これには費用の上乗せばかり押し付けられている。日本の負担額がこれまで約2300億円だったが、アメリカの軍事費予算削減の影響を受け、1200億円程度が上積みされるらしい。また、日米防衛当局間では嘉手納基地以南の米軍基地内の施設返還を約束していたが、これも先延ばしされるらしい。安全保障上の問題とは言え、施設はそのまま帰されず、費用は水増しされるのを黙って認めるだけである。こういう相手国の言いなりになる外交交渉を何と呼ぶべきだろうか。
あらゆる日本の外交はほとんど機能せず、今では韓国のスマートな外交に太刀打ちできないありさまである。昨日から第2回核セキュリティ・サミットが韓国のソウルで行われ、世界の首脳がソウルに集まっている。ホスト国の李明博・韓国大統領はアメリカのオバマ大統領や胡錦祷・中国国家主席らと会って北朝鮮の弾道ミサイル打ち上げに対する非難スピーチを行い、その存在感をアピールしている。李大統領の際立った訴求力に比べて、わが野田首相は消費税値上げの党内対策に追われて昨晩遅くやっとソウル入りする有様である。まったく影が薄いのだ。党内のわがままに引きずられて、首脳外交に遅刻とも受け取られかねない登場では、いくら正論を述べたところで参加国から評価されないし、世界へのアピールという点でも大分弱いのではないだろうか。午前中にサミット会議に出席して福島原発事故に関する反省と今後の対策を述べたとの報道はあったが、驚いたことに、その野田首相が今夕には、官邸で民主党幹部らと会議を行っている。サミットの共同声明が発表された時、首相はその場にいたのだろうか。もし、その前に失礼したとすれば、野田首相は日本の総理大臣として注目されるべき立場と責任があるということが分かっていないのではないだろうか。
日本は唯一の被爆国として、また福島原発事故の収束対応を行っている最中にあり、わが国の立場はサミットで大いに注目されている。にも関わらず、お先に失礼とばかり帰国して、相変わらずにっちもさっちも行かない消費税値上げの取りまとめに全力を傾けている。少し緊張感が足りないのではないだろうか。私にはなぜかピントがずれているように思えてならない。残念ながら、これが今の日本の政治のトップのパフォーマンスであり、実態である。