セルビアの国民的叙情詩人ニェゴシュの「山の花環」と「小宇宙の光」を共訳書として出版したベオグラード在住の山崎洋さんから日本国内における文庫本出版の橋渡しを頼まれ、今出版ニュース社の清田義昭社長にお願いしているところだが、一昨日共訳者の田中一生氏の奥様から両共訳書を送っていただいた。装丁を見ただけで、相当手がかかり丁寧に作ったという印象である。特に「山の花環」は、版も大きく真っ赤な厚手の表紙は強いインパクトを与えてくれる。詩にもちょっと目を通してみたが、短いが重厚な感じである。詩の良さは中々分からないが、心に訴える力は充分あるように思う。拾い読みしてみると19世紀前半の作品であるが、トルコへの恨みつらみや、トルコ戦争の表記が多く見られる。セルビアとトルコとの間で相当激しく戦われていたことが窺える。地味な詩というカテゴリーで、著者はセルビアでは高名な詩人ではあるが日本ではほとんど名を知られていないだけに、積極的に出版を引き受けようとするところが現われてくれるだろうか、若干気にかかる。何とか引き受けてくれる出版社が現われないか願っている。
山崎さんからはこれとは別に今月14日ベオグラードで行われたヴァイオリニスト豊嶋めぐみさんのコンサートが上手くいったとの知らせを受け、彼とともに喜び合った。特に「海ゆかば」を作曲した信時潔の曲がお好みの豊嶋さんが特別に同じ信時作曲の慶應義塾塾歌をベオグラードで奏でてくれたのである。
今年1月海外における慶應に関する貴重な情報としてコンサート開催について慶應義塾に知らせたところ何の反応もなかった。関心がないのだろうと放念していたところ、昨日になって突然「三田評論」編集部から、そのコンサートについて山崎さんに感想を書いて欲しいとの申し出があった。ここでつい一言皮肉を言ったうえで、山崎さんに連絡すると伝えた。今朝山崎さんから執筆を承諾するとのメールがあったので、「三田評論」に伝えた。担当者は大喜びである。海外で、それもバルカン半島のベオグラードという特殊な場所で日本人によって母校の校歌が演奏されたというニュースは、塾員の、それも海外在住の塾員からも大きな反響を呼ぶのではないかと思い、彼の寄稿を楽しみにしている。