1784.2012年4月1日(日) 冷え冷えする南海トラフ地震の想定

 「南海トラフ」という日本列島の東側に沿った海溝がある。それが予想される東海、東南海、南海地震を起こす原因と言われている。今朝の新聞各紙に最大級の地震が起きた場合の津波高と震度分布の推計を内閣府の有識者検討会が公表した。このところ首都直下型地震発生のニュース、並びにそれに備えた対策がしきりにメディアでも伝えられるようになったが、この最大級地震の想定、つまり様々の仮定に基づく複数の試算から最悪の結果をつなぎ合わせて出された数字には思わずびっくりである。

 あまりにも大規模な地震に対する、関東から九州方面にいたる自治体と企業、公共機関の備えは現時点では十分ではなく、今後早急に防災対策の検討を迫られることになりそうである。

 東日本大震災の教訓から想定を「数百年に一度」の地震から「千年に一度起こりえる最大級」に変更した。Mは9.0、津波は9.1と想定した。これによりこれまで津波高が20mを超えることがなかった高知県黒潮町が、最大34.4mと推計された。伊豆諸島の新島は29.7mとされたが、これでは伊豆7島は全滅ではないか。現在津波防波壁を18mに整備中の中部電力浜岡原発では、何と最大21mの津波が押し寄せる計算になり、防波壁を修正することを余儀なくされることになりそうで、原発再稼動にも影響を及ぼしそうである。

 朝日、日経紙の朝刊にもトップ記事ではカラー写真付の解説が掲載され、震災前なら軽視されそうな記事も、震災と前記の首都直下型地震襲来の情報が相乗的に関心を呼び国民の間でも真剣に受け取られるようになったようだ。政府は国家的な観点から対策大綱をまとめるようだが、6月までに死者数や建物倒壊戸数などを公表するそうだ。まああまりいい気分にはなれない。この南海トラフでは東京都は伊豆諸島しか対象に入っていないので、23区内では津波より地震自体への警戒を怠らないことが求められている。

 最近興味深く読んでいた小松左京著「日本沈没」第一部(上)(下)を今日読み終えた。本書は1973年に出版されたものだが、内容が南海トラフ地震を含めて現代に通じているように思える。著者自身が後記に「この作品は完全なるフィクションであって、いかなる実在の人物、事件をも、モデルにしていない」と敢えて強調しているところがミソである。実にリアルな描写に、つい日本の近未来と将来像を予測しているのではないかと思い過ごしてしまうほどである。数年前に観た映画「日本沈没」ではとても描ききれなかった登場人物の内層心理や日本国土が沈み行く様子が、実に迫力を持って描かれている。それにしてもこの作品の幕引きの構成が分からない。最終頁の最後の場面で、主人公の小野寺が八丈島の沖合いを船舶でタヒチ方面へ向かって南下したが、どんづまりの最後のたった2行で突然彼はシベリア鉄道で西へ向かった。ストーリーにはまったく関係ない。どうもこのどんでん返しの結末の意味がよく分からない。小野寺は一体どっちへ向かったのか。

 好評だった第一部は瞬く間に上下併せて400万部を売りつくしたという。第一部出版の33年後に、第二部が世に出た。第二部では国外へ避難した日本人がカザフスタンやパプア・ニューギニアで苦難に負けずに生き延びていく姿が描かれているようだ。近い内に苦難の日本再生物語を描いたその第二部も読んでみたいと思う。

2012年4月1日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com