今日4月8日はお釈迦様の誕生日、花祭りである。花祭りと言えば、我々の小学校時代は教科書にも載っていて、誰でも知っていたものだ。今でも諳んじることができる「今日は楽しい花祭り お釈迦様 天上天下を指差してお立ちになっていらっしゃる。今日は楽しい花祭り」という一節があった。ところが、今では花祭りよりお花見の方がよほど世間の関心を呼ぶものと見え、桜開花情報が喧しい。特に震災に遭った東北地方の桜便りが毎日のように伝えられ、これはこれで中々楽しい。
近年東京では千鳥ヶ淵、靖国神社、新宿御苑などと並んで、目黒川沿いの桜並木が急速にクローズアップされ、連日その開花状況や賑わいがテレビで伝えられるようになった。今日は絶好の花見日和となり、先日から居候するようになった長男が今朝高校ラグビー部の仲間と八王子へ花見に出かけたので、それでは我々夫婦も花見をと思い、目黒川へ行ってみることにした。東急東横線中目黒駅を降りた途端、もう浮かれ花見の中にいるようなものである。駅構内は人で溢れ、改札口は臨時改札口まで開設され、駅前から川端まで桜祭りの幟の間を縫うように人ごみを掻き分けて歩いた。
ところが、ものすごい人ごみで思うように歩けない。左岸を歩いたかと思うと橋を渡り反対側に向かい右岸を歩く始末である。肝心の桜も今が満開で見事なものである。目黒川も澄んでいて何と1羽の白鷺が餌を啄ばんでいた。
やはり桜は日本の象徴であり、日本の花だと感じた。学生時代、というより受験勉強で学び馴染んだ、桜を詠んだ和歌のうち3つばかり印象に残っている歌を挙げてみる。
ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ (紀友則)
いにしへのならのみやこの八重桜 けふ九重ににほひぬるかな (伊勢大輔)
花の色は移りにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに (小野小町)
来年の花見はどこへ行こうかと思う。
さて、今年のGWは海外旅行者が増えるとの記事を見たばかりだが、今日パキスタン北西部のフンザとギルギットで孤立状態にあった日本人団体客77人が、パキスタン空軍輸送機で救出され、首都イスラマバードに運ばれた。一昨日から日本の外務省がパキスタン政府に空軍機で救出してくれるよう要請した結果、パキスタン側が速やかに応じてくれた。
しかし、これは観光業界にとって汚点とも言える事件である。こんな危険で、交通不便な地域になぜ観光ツアーを企画したのか、日本橋にある旅行会社のあまりにも非常識な感覚を疑う。この地域は以前から民族紛争が絶えないところである。確かに自然は美しく、私も憧れている場所のひとつである。だが、個人で個人の責任で行くなら、自分の経験上からも分からないこともない。しかし、商業ツアーとして普通の旅行者が団体を組んで行くべき場所ではないことは分かりそうなものである。結果的に世間を騒がせ、両国間の外交交渉を余儀なくされ、相当な費用もかかった。この費用は誰がどう負担するのか。1旅行会社の軽薄な企画のために全観光業者が顰蹙を買い軽視されるようになるのである。
旅行目的地の選定には、よほど慎重であってほしいものである。