1800.2012年4月17日(火) 原発再稼動に腰が定まらない野田政権

 このところ福井県の大飯原発の再稼動について考えが揉めている。安全と公表した政府に対して、周辺自治体、特に京都府、滋賀県、そして大阪市が安全対策は拙速で不十分と主張し、更なる万全なる安全対策を行うよう求めている。地元の福井県は県の専門家の意見を聞いたうえで回答すると表明、原発所在地のおおい町は本音では原発再稼動を願いながら、自らの考えを言い出すことを差し控えている。これだけ反対派の意見が強くなってきたら、ひっそりと声を潜めているより手がないとも言える。

 問題は政府と民主党執行部の夢遊病者のような言動である。「原発ありき」を腹に収めて行動しているから、強い反対派に会うと一瞬折れたような印象の返事をする。どうも考えがふらふらしている。それがまたぶれているようなイメージを増幅させてどうも腰が定まらない。特に監督官庁である経済産業省の枝野幸男大臣に至っては、大飯原発を訪れたり、西川一誠・福井県知事を訪れたりと、安全であるので再稼動に同意して欲しいとしきりに訴えているが、すっきりと色よい返事がもらえない。

 その枝野大臣の発言が物議を醸している。当初は再稼動に慎重だった大臣はいつ再稼動に積極的になったのか。

 1月には、「再稼動を急ぐ気持ちはまったくない」「原発がまったく稼動しない状況でも、昨夏のように産業へ影響を与えない範囲で乗り切る可能性はある」と再稼動に慎重な意見を述べていた。4月に入っても2日の参議院予算委員会では「現時点では再稼動に反対」と応えていた。それが急転直下翌3日には君子豹変したのである。前日の発言に対して、積極的な反対ではないのかと問われ、「違う」と応えた。つまり、積極的には反対しない、言い換えれば賛成と取れないこともない。どうもこの一両日の間に心境の変化があって微妙にぶれ出したようだ。それが13日には「原発への依存度を最大限ゼロの目標に引き下げるのは政府の明確な方針だ」とまたまた慎重論へ戻る。そして翌14日に西川一誠・福井県知事との会談では、「日本経済の現実を考えると原発を今後とも引き続き重要な電源として活用することが重要だ」と再び再稼動へ積極的な考えに変化する。あまりの起伏の激しさに国民はとてもついていけない。

 そして、問題発言が出た。5月5日に全国の原発54基中唯一稼動している北海道・泊原発が定期検査のため稼動を停止する。それを承知のうえで、枝野大臣は「原発が5月6日から一瞬ゼロになる」と軽はずみな発言をしてしまった。全原発停止は42年ぶりである。この「一瞬」の言葉の裏に、すぐ大飯原発が稼動することを想像したのではないかと思われている。

 そこへ昨16日になって民主党仙谷由人・政調会長代理が「原発を一切動かさないということであれば、日本は真っ暗闇になる。ある意味日本が集団自殺をするようなものになる」とも、「日本の経済、社会が電力なしでは生活できないことは、昨年の計画停電騒で明らかだ」とも述べ、「原発ありき」を暗示するような発言をしてしまった。この仙谷発言もデータ・ソースは再稼動に熱心な電力会社であり、一般の理解とはまったく相容れない。苦しいことは事実であるが、贅沢さえしなければ、昨夏だって何とか切り抜けられたのではなかったか。

 民主党内幹部の間でも若干考え方のニュアンスは異なるが、再稼動容認はもう決まっているようだ。フリをするだけのこんな言葉遊びはもういい加減にしてもらいたい。

 野田首相の言う「脱原発依存」どころか、民主党内では意見は分かれ、揺れ動き、ぶれてどういう結論を出すべきか、まったく分からなくなっているのではないだろうか。これだから、橋下徹・大阪市長に「民主党には統治するのは無理」と言われてしまうのだ。

 朝日朝刊にコメントが載っていた。「政権の芯のなさが枝野氏の揺れを生み、国民を戸惑わせてもいる」。その通りである。

2012年4月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com