昨日フランス大統領選挙が行われ、現職大統領で保守系国民運動連合(UMP)のサルコジ氏は社会党のオランド氏に遅れを取り第2位に甘んじた。しかし、両氏とも総投票数の過半数を抑えることができず、来月6日二人による決戦投票に持ち込まれることになった。
1958年に第5共和制が発足してから再選を目指す現職大統領が第1回の投票で1位になれなかったのは初めてだという。強気のサルコジ氏の心情はいかばかりかと思いやられる。
サルコジ大統領は、昨年のギリシャ、イタリアの債務危機以来ドイツのメルケル首相とともにその解消に向け強いリーダーシップを発揮して圧倒的な存在感を示していた。それでもなお国民の信頼を掴み取るまでには至らなかったようだ。
5年ごとに行われる今年の大統領選で大きな争点になっているのは、悪化する景気とその引き金になったと論われている失業者の増加である。つまりフランスにとって外国の財政問題よりも身内の失業問題の方が大事なのだ。オランド氏28.63%、サルコジ氏27.08%に次いで第3位だったのは、18.01%を獲得した移民反対の極右・国民戦線女性党首ルペン氏だった。ルペン氏は経済不安の最大の要因は失業者の増加をもたらした移民の流入であると選挙前から指摘していた。ルペン氏は近年フランスへの移民の増加がフランス人の職場を奪ったとサルコジ大統領を厳しく非難しているが、これがかなりの支持を集めている。結果的に過去の大統領選挙において国民戦線として最大数の支持者を獲得し、極右票が決戦投票のキャスティングボードを握る可能性がある。因みに現職サルコジ氏もハンガリー系移民であるだけに、移民政策に対してあからさまに厳しい対応は取れず、社会党のオランド氏自身も社会主義を信奉する建前上移民政策に抑圧的なポーズも取れず、移民政策に関する両人の心中は複雑であり、対応は難しいだろう。
6日の第2回決戦投票で雌雄を決することになるが、昨日の投票後に行われた世論調査ではオランド氏がサルコジ氏を9ポイント引き離しているそうである。国際社会でそれ相当の存在感とリーダーシップを示していたサルコジ氏もついに正念場を迎えたことを意識したのか、最後のキャンペーンではいつも通り強気のスピーチの中にも「私を助けてください」などと気弱なセリフも吐いていたようだ。
それでも日本の指導者を決める総選挙の投票方式や、政党内の話し合いで決める内輪の論理に比べて、彼らのシステムがいかに民主的で透明性があるかを考えると羨ましいかぎりである。