1823.2012年5月10日(木) 国会議員の海外出張に厳しい眼を

 国民に負担を強いるばかりで、自分たちは一向に重荷を背負おうとしない代表例として官僚と政治家がいる。その政治家、中でも国会議員の海外出張費が国民感情を逆撫でするかの如く、大幅に増額されようとしている。国民の気持ちとすれば、かつて社長の座を役員会で突然解任された岡田茂・三越社長が「なぜだ?」と喚いた岡田社長と同じように、「なぜだ?」と叫びたい気持ちである。

 国会議員の海外出張費用は年間、衆議院4億4100万円、参議院1億1200万円であるが、これを一気に5倍増に増額しようと密かに検討されている。こんな国家財政が厳しい時期に自分たちだけが特権によって大盤振舞で甘い汁を吸おうと企らむ神経がどうにも分からない。目に余る行為である。これをメディアが報道しようとしない。これも理解できないし、政治家と同罪である。

 国会議員の海外公務出張に関しては、これまでにもその効果にとかくの風評や批判があった。曰く物見遊山ではないかとか、或いは選挙民に対して未熟な知力の箔づけを狙った選挙運動ではないかとか、姦しい噂話に晒されていた。

 私自身いくつかの衆議院委員会委員の海外出張をお世話した経験からみると、率直に言って外国を見ることは異なる視点から物事を見られる等のメリットや、「百聞は一見に如かず」の諺通り、無駄とは思わない。目的やその方法、そして出張者にそれなりの見識があれば効果は上がると思う。だが、財政が苦しい中で投資する費用と得られるであろう諸々のメリットを量りにかけ、国会議員の海外出張を対費用効果の面から考えれば、残念ながら得ることの方が遥かに少ないと思う。

 かつて出発前の打ち合わせ会に出席した時、出張する代議士の事前勉強不足と未熟な知識からまったく打ち合わせにならず、その場を懇親会に切り替えた例もある。あんなノーテンキぶりで外国の議員にどんな質問をして、成果を収めることができるのだろうかと不安に駆られたこともある。出張報告書は随行員が書くからとあっけらかんと語った代議士もいた。

 ある代議士のケースは、日本の全権大使が晩餐会を催してくれても日程が合わなければ、「好意は謝したうえで断る」などと、最初から大使が代議士の日程に合わせろと言わんばかりの不遜な発言が出てびっくりしたこともあった。

 また、環境委員会一行のライン川観光では、「観光船上から川の汚染状態をチェックする」というのが観光をカムフラージュした視察の言い訳だった。科学的な汚染調査などより楽しいラインクルーズ観光先にありきだった。

 更にこんなこともあった。東西の壁崩壊前に東ドイツへ向かったある衆議院委員会一行が、ベルリンのチャーリー検問所まで来ていながら東ベルリンへ入国せず、Uターンした驚天動地の事例があった。翌日衆議院事務局からなぜ先生方一行が東ドイツへ行けなかったのか。取得したビザに問題があったのではないかと問い詰められ、詳しい事情が分からず困惑したことがあった。入国しなかった原因はあまりにもお粗末な議員個人のわがままから生まれたのだった。ある有力議員が検問所で兵士に身体を触れられたことは、国家を代表する国会議員に対して失礼な行為で不愉快だと憤慨して、団長に対してこの場で入国を止め即刻引き返すべきだと強硬に主張して、一行全員が非常識にも東ドイツへの入国を直前になって取り止めたのである。東ベルリン側で待機していた東ドイツ駐在日本大使館員も面くらい、なぜ議員一行が入国して来ないのか、その場では原因が分からず、外務省へ緊急連絡して、入国できなかった真相が判明するまで一時は大騒ぎだった。まるでやることが子どもだった。

 すべてがこれほど酷いわけではないが、国会議員の海外出張で馬鹿馬鹿しいことは他にいくらもあった。国民感覚から推して国会議員の海外出張が国家、国民のために役立っているとは到底思えない。まったく効果なしとは言わないが、むしろ、非常識、恥さらし、無駄使いと呼んで当たらずとも遠からずだったと思う。

 それがこの苦しい財政事情の中で大幅に予算を増やそうというのだから、国会議員というのは一体何を考えているのか。国のために働かず、自らの欲得のために動き、小遣い稼ぎをして遊びまわる輩と決め付けても罰は当たらないような気がする。それにしても国会議員の貧困な知的レベルと低次元の行動様式は推して知るべしで、目を覆いたくなる。

 さて、国会議員とはまったく関係ない話だが、今日は我々夫婦の43回目の結婚記念日である。新婚旅行で11日間もタイと香港をぶらぶらしていたが、バンコックのホテルでは由紀さおりの♪夜明けのスキャット♪がしばしば耳に入ってきた。その曲を東北で由紀さおりが歌っているのを今日偶然にもテレビで観た。あれは1969年だった。現在孫を4人持つ身になった。光陰矢の如しである。

2012年5月10日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com