1826.2012年5月13日(日) フランス大統領選とギリシャ議会選挙結果が欧州危機を招来か。

 1週間前に行われたフランス大統領選挙とギリシャの議会総選挙の結果が、両国の経済と社会情勢に大きく影響しそうな様相である。ことはこの2カ国だけに留まらず、ヨーロッパと世界経済にも少なからぬ打撃を与えつつある。遠く離れた日本もその例外ではなく、日経平均株価は選挙後下がりっ放しで先週末には3ヶ月ぶりに9千円を下回った。経済界からもヨーロッパ債務危機の再来なんか考えたくもないとの声が聞こえる。

 フランス次期大統領に選出された社会党のオランド氏は、囁かれているヨーロッパ経済危機や緊縮策への国民の不満を吸収したと考えられている。実際ヨーロッパ経済は昨秋以来マイナス成長に陥っていた。ユーロ導入以来失業率も最悪の10.9%を記録した。オランド氏の「これから改革が始まる」との訴えは威勢が良く、ヨーロッパの新たな出発と気構えは良いが、だからと言ってオランド氏が選挙中訴えてきたように、ここまでサルコジ大統領がドイツのメルケル首相とともにまとめてきた、EU25カ国の財政協定を改定するための再交渉が現実的に可能なのだろうか。すでにメルケル首相は再交渉には応じられないとの否定的な立場を明確に示している。更に、今後緊縮政策への不満を解消しながら、経済成長に重きを置くというが、あれもこれもの両手に花がそう簡単に実現できるとは思えない。オランド氏は当面年金受給開始年齢を一部60歳に戻すとか、教職員を増員するような支出を伴う政策を視野に入れているようだが、苦しい財政事情の中でどう財政規律と両立させていくつもりだろうか。前途は益々もって多難である。

 一方、ギリシャ政界も極めて視界不良である。第1党となった新民主主義党(ND)が第2党の全ギリシャ社会主義運動(PASOK、選挙前は129議席を占め第1党だったが、今回41議席と惨敗して第3党へ転落した)以外の政党と連立政権を組めなくなった結果、過半数に達せず組閣を諦めざるを得なくなった。改めて近い内に総選挙を行う可能性が生まれてきた。だが、財政危機が身近に迫った今、手間隙のかかるそんな悠長なことをやっている場合だろうか。また、第2党に躍進した「急進左翼進歩連合」の若きチプラス党首が債務返済拒否を主張しているが、一昨年の財務危機の際EUの緊急支援によって何とか急場を凌いだはずである。借金を抱えながら返済しようとしない人に今後誰が金を貸すだろうか。時々刻々経済危機は身近に差し迫っているのだ。

 それにしてもその昔ソクラテスやアリストテレス、プラトンを生んだ賢人の国・ギリシャがどうして、現実の政治に賢明な知恵を出すことができないのだろうか。

 もうひとつ疑問を感じたのは、あの外国人好きなギリシャ人がどうして移民排斥を訴えた極右の「独立ギリシャ人(議席数10→33)」や「黄金の夜明け(同0→21)」に賛同し、議席数を大幅に飛躍させたのかもよく分からない。「フィロクセノス」はギリシャ語で「外国人が好き」という、世界でただひとつの言葉を持つほど外国人が好きなギリシャ人が移民排斥とは信じられない。このホスピタリティ溢れる言葉に感激した小田実が著書「何でも見てやろう」の中でこの言葉を紹介して、私もそれを題材にエッセイを書き、「ギリシャ観光局長賞エッセイ入賞」をいただいた。実際ギリシャの地方都市ではギリシャ人のホスピタリティを感じ、「フィロクセノス」を強く意識したほどである。世界の経済的浮沈と金儲け主義の悪弊が、回りまわって本来根っからのお人好しだった素朴な国民性まで傷つけてしまったのかと考えるとつい憂鬱になってくる。

 そんなことも考えさせられるフランスとギリシャの選挙結果、そしてヨーロッパ経済の行き詰まった現状と政治力学の停滞である。

2012年5月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com