明後日からヨルダンとイスラエルへ出かける。「JTBルック」ツアーに参加し、ツアーがヨルダンを離れる当日ツアー一行と別れて、単身アンマンとアブダビに1泊ずつ滞在して2日遅れの11日に成田へ帰る予定である。控えの日程表を妻に渡したら、不安そうにアンマンとアブダビのホテルが決まっていない理由を尋ねるので、それならと愚妻を安心させるために、今日インターネットでアブダビ海岸沿いの「シェラトン・アブダビ・ホテル&リゾート」を予約した。税・サービス料込みで9,399円だった。アンマンについては、45年前に宿泊した「ホテル・アルカサール」を現地で予約したいと考えている。
しかし、この「ホテル・アルカサール」が昔通り現在も営業しているかどうかが少々気になるところである。あの当時は中東戦争により戒厳令下にあり、街には軍用車や軍人ばかりが目につき、外国人観光客なぞほとんどいなかった。ホテルもこじんまりした古い石造りの建物だった。だが、このホテルはアンマン旧市街の目抜き通りに面して、目の前にローマ時代のコロシアムがあるという絶好のロケーションにあり、しかも空港案内所が薦めてくれたホテルだ。それなりに信用のあるホテルだったのだろう。だが残念ながら、ホテルリストをいくら探しても同じ名前のホテルは見当たらない。あれはいかにも伝統のありそうな3階建ての古いホテルだった。今では市内に欧米系の近代的なホテルが進出する中で地場資本としてはやっていけなくなったのかも知れない。もし建て直しされていたら、多分45年前に私が宿泊した痕跡なんてなくなって、しかめっ面の軍人に尋問された支配人室なども検証することは絶望的だ。
何とかして当時の身が震えるような鮮烈な臨場感を呼び覚まして、アンマン市内を歩き回ってみたい。アラブ諸国の中でも比較的治安が安定している今日のヨルダンは、あの第三次中東戦争でヨルダン川以西をイスラエルに占領され、不倶戴天の敵とまで言われたお互いがこれほどスムーズな外交関係を築き上げているとは驚きである。しかも、陸路で国境を横断できる現状にはつくづく時代は変わったものだと思う。もちろん油断はできないが、今では軍隊に捕捉されたような、ぴりぴりした危険な治安ではないだろう。不安の中にも大いなる期待と楽しみがある。ちょうどその日、8日は日本対ヨルダン戦のサッカー・ワールドカップのアジア最終予選が日本で行われる。ヨルダンにもきっと友好的なムードが生まれてきている筈だ。現地でも日本に対する関心が高まって、興味本位にサッカー談義に引きずり込まれるかも知れない。
それに引き換え、北隣のシリアの国内の混迷は益々酷くなるばかりである。アナン前国連事務総長がアサド・シリア大統領に会い、政府軍による人民への暴力的弾圧を止めるよう説得しているが、一向に効き目がない。
ついに堪忍袋の緒が切れたか、アメリカのクリントン国務長官がロシアに対して名指しで非難口撃をした。シリアに対する武器の輸出を止めるようにとの忠告である。ロシアも中国も内政干渉は控えるべきと主張しているが、所詮中ロが自分たちの都合を代弁する都合の良い弁護こそが残虐行為を野放しにしていると欧米諸国から批判されている。この間に毎日罪もないシリア人の尊い命が失われていく。変わらないのは、世界紛争の火種は今もアラブ諸国のどこかにあるということである。