1863.2012年6月19日(火) 「地元」と「被害地元」の違い

 どっちを向いても揉め事ばかりで好い加減にうんざりである。一番お粗末なのは、民主、自民、公明の与野党合意が形成された消費増税一括法案に関する民主党内の内輪もめである。修正合意した同法案について、小沢一郎・元代表を中心とするグループらが昨日開かれた党合同会議で同法案の採決に反対を唱え、混乱は一向に納まる気配がない。今日も午後遅くなってから全党員を集めた集会で、実のない討論を繰り返している。消費増税は断じて容認できないと民主党に離党届を提出した、確信犯的な議員も現れた。最終的に前原誠司・政調会長が一任を取り付ける形で党内調整を打ち切った。結局民主党は党の方針に反対して、離党して党は分裂の事態に陥るではないかと見られている。

 さて、今原発立地自治体を「地元」と呼ぶ、当然の呼び方に対して地元とは境界を越えていても、万が一の場合、被害が及ぶかもしれない地域を「被害地元」と呼ぶことを主張する自治体が増えてきた。

 確かに行政的には地元とは言えないかもしれないが、放射能が風の向きや流れによって立地自治体の境界を越えて流れ込んで被害を及ぼすのを、立地自治体でないからと言って差別されたのでは、住民の気持ちは納まるまい。

 特に、滋賀県の嘉田由紀子・知事は4月に山田啓二・京都府知事とともに、大飯原発の再稼動をめぐる7項目の提言を政府に突きつけた時、「被害地元」という言葉を使った。それは去る3月再稼動の同意が必要な「地元」に、滋賀県は含まれないと藤村修・官房長官が述べたのがきっかけだった。

 嘉田知事によれば、大飯原発との距離は、福井県庁より滋賀県庁の方が近い。近畿地方の水源である琵琶湖が汚染されれば、影響は極めて大きいと懸念を示し、立地自治体並みの扱いを求めた。今、原発周辺の各地で「地元」の定義を問い直す動きが広がっているという。

 その典型的な例は、新潟県の東電柏崎刈羽原発から20kmの長岡市であり、佐賀県にある九州電力玄海原発・周辺自治体である。後者では県境を越えて長崎県と30km圏の長崎県内4市が、九電と安全協定を締結した。

 一方で、立地自治体には不満が燻っているようだ。立地自治体は、「被害地元」とは完全に立場が違うと強調する。そもそも立地自治体は「被害地元」とは、歴史も自覚も異なるというのが彼らの言い分のようである。地元の解釈が異なれば、核燃料税や電源三法交付金などのリスクと引き換えの既得権益が揺らぐのではないかとの危機感があるようだ。「地元」と「被害地元」との間で妙ないがみ合いのようなものが生じなければ良いがと願う。ここには、まだ相手の気持ちを慮る思いやりと話し合いの余地があるようだ。

 いずれにせよ、ひとつの原発事故が自治体同士の不信感、対立まで誘発する事態となっている。せめて、民主党には同じ党内の見苦しい揉め事だけは人前に晒さないようにお願いしたいものである。

2012年6月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com