昨日NHKでかなり大きく取り上げられていた話題が、中国人の日本観光客数の減少という意外な事実だった。中国人の日本への観光客数は昨年の震災の年の特例を除いて、近年うなぎのぼりに増え、日本の観光業界は受けに入っていると思っていた。メディアでも中国人団体客が秋葉原や、モールで大量にショッピングする姿を派手に報じていた。政府観光庁も日本へのインバウンド旅行が観光産業と日本の経済へ活力となって大きく貢献をすると述べ、とりわけ中国人の観光客増加に期待していると公言し、その振興策に力を入れていた。
ところが中国人観光客の数はいくら増えても、そのこと自体が一向に利益を生まず、観光振興、ひいては国の経済の発展につながっていなかったことが明らかにされ、ついには日本の観光業界も中国人の受け入れに消極的になりだしたということを興味深くトピックで取り上げていた。
観光客の往来は、送り出す側にとっても受け入れ側にとっても、お客が増え本来なら双方にとってハッピーであるべき筈なのに、どうして中国人旅行だけ、双方にアンハッピーでアブノーマルな事態になったのだろうか。最大の原因は、日本の旅行会社が中国内で中国人旅行客を取り扱えない中国の国内旅行手配上の制約にある。中国で中国の旅行会社同士の激しい価格競争の結果、日本の観光業の相場価格を無視して大幅に相場を下回る仕入れ価格を一方的に日本の観光業者に押し付ける形で中国旅行会社が企画、販売されているためである。その結果中国人は必要以上に安いツアー価格で日本を旅行できる。日本の観光業者は無理をして赤字で仕入れる悪循環を繰り返し、最後に結局手を引くという最悪のパターンになってしまった。
日本国内の観光業者内の顧客獲得競争でも、しばしば行われているのが「指値(さしね)」と言われる業者泣かせのやり方である。手配業者がホテル、レストランなどを一方的に仕切って仕入れ価格を呑ませるやり方だが、日本国内なら相場が分かっているから、適当なところで提供する側が下りてしまう。それが、相手の事情がよく分からないから、中国国内の業者間の取引慣行に涙を呑まされているわけだ。
現状では、日本への6泊旅行が中国発着で6万円という安値であり、当然内容が劣悪になる。結果的に中国人旅行客は、もう2度と日本への旅行をしないという。
中国人旅行によって、日本の観光業者が赤字続きとなり、中国人旅行者は金輪際日本へは旅行しないという、思いがけず最悪の結果となってしまった。「安かろう=悪かろう」という、お互いに不幸な結果となってしまった。
当分の間、冷却期間を設けて双方が顧客のための旅行をどう作り、販売するのかという点を原点に返って検討すべきだろう。それにしてもどうも後味が良くない。