ペンクラブの知人で税理士の柏木隆雄さんから、明治大学裏の「エスパス・ビブリオ」という洒落た[book café]で、童謡詩人・金子みすゞについて金子みすゞ研究家の矢崎節夫氏が講演するのでぜひ聴講をとお誘いをいただいた。
10年ほど前に山口県長門市仙崎にある商家風の金子みすゞ記念館を見学したことや、最近みすゞの詩に関心を抱いていることもあり、期待して出かけた。講師の矢崎氏が学生時代にみすゞの詩に強い興味を抱いて、西条八十からみすゞの詩について話を聞いたことや、みすゞの実弟から遺品を預かったことなどからみすゞ一筋にのめり込み、金子みすゞという不世出の詩人に関する著作やみすゞの啓蒙に取り組んでおられる。矢崎さんの努力の結果もあり、約30年前から金子みすゞという詩人が再評価されて再び世に知られるようになった。みすゞの小学校時代の恩師のみすゞ評を録音で聴かせてくれたりしながら、矢崎さんは2時間近くに亘りみすゞ研究についてうんちくを披露してくれた。金子みすゞは26歳の若さで亡くなったと言われているが、それが自死だということを初めて知った。
とりわけ印象的だったことは、
1.詩はジャズを聴きながら朗読するとよい。
2.浜辺へ出たら砂浜を裸足で走るくらいでないと詩情は湧かない。
3.詩は声を出して読む。
ということだった。
高校の先輩である日本童謡協会会長の湯山昭さんも来られていたが、これまで3度ばかりお会いし、拙著を差し上げてもいるのだが、私のことをまったく覚えておられないのには少々がっかりだった。
帰りに「金子みすゞ童話集」を1冊買い求めたが、その中にいくつかお気に入りの詩がある。そのひとつをここに紹介しておきたい。これはテレビのCMでも使われている。
【こだまでしょうか】
「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。
「ばか」っていうと
「ばか」っていう。
「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
そうして、あとで
さみしくなって、
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、
いいえ、だれでも。