7月10日付本ブログで「中国人の日本旅行が日中双方にとってマイナスだと?」として取り上げ、中国人の訪日観光客に関する驚くべき価格構造による安売りツアーが結果的に悪評を呼び、多くの中国人から日本へは2度と行かないという苦情が出ている点を中心に、中国人ツアーの特殊な手配実態について書いた。その情報の根拠はその前日のNHK番組で話題になったものであるが、つい1週間前にも同じくNHK番組「追跡!真相ファイル・・・格安日本ツアーのカラクリ」で再びこの問題を取り上げ、今度は前回の番組では触れられなかった、中国人ツアーの仕入れ、ガイド、ショッピング等の特殊な問題をかなりあからさまに追及していた。それによると、悪質中国人旅行会社、無免許ガイド、オプショナル・ツアー、ショッピング・リベート等の分野で旅行者を騙す仕組みがあることを明らかにしていた。
中国人団体旅行のすべてがこの種のツアーであるわけではないが、中国人ツアーについてかなり誤解を生み、悪質ツアーに懲りた中国人観光客はもう2度と日本へは行かないとはっきり述べている。これらの訪日団体は必ず、決まった免税売店と称する怪しい店で仕入れ値の10倍もする、ぼったくり価格の健康薬品などを違法に買わされ、そのリベートとして1品につき、ガイドと中国人旅行会社へそれぞれ5千円が渡される。ガイドは在留許可のない香港、或いは台湾人がほとんどである。何のことはない。日本を舞台に中国人同士で騙しあいをして、結果的に日本のイメージを落とし、訪日中国人観光客の減少に手を貸していることになるのだ。こんな違法だらけのツアーをどうして取り締まらないのか、と多田浩人・観光庁国際交流推進課室長に取材すると現状を放任していることにまったく責任を感じておらず、改善しようとの気持ちも感じられない。
国際交流と言いつつ、外国と日本との人的交流が数の上では伸びたにしても、実態はこんな観光行政が大きな顔をしてチョンボを重ねているのだ。観光業の現場の実態を知らない観光庁の役人は、「観光立国」という権威あるメッセージと多少の予算さえつければ時代の流れが味方して自然に交流の実績は上がると、観光業を甘く見ている。
中国人の日本へのツアーを何とかして増やそうと真剣に考え、努力している真面目な団体、会社もある一方で、彼らの努力を無にするヤミ・グループが後を絶たないようだ。友人が所属する団体も良識的なツアー手配を行いつつ、努力を積み重ねて実績を上げてきた。今秋官民一体となって日中国交回復40周年記念企画の一環として、中国6都市で日本ツアー見本展示会開催を予定しているが、日本の観光庁が日本サイドの業者に見積もりを募った日時と、中国側が理解していた日時が大幅にずれていて事実が判明して、時間的にもはや間に合わないという失態が起きている。これも観光庁がらみの手抜きのお粗末さでお話にならない。
国土交通省は本音ではあまり評価していない「観光事業」を取り仕切る観光庁には、優秀な人材を派遣せず、これが対外的に信用を失うような結果となっているのではないだろうか。これでは国際交流とか、国際交流は平和へのパスポートなどと口先だけで景気の良いアドバルーンは揚げても、観光は人が根気強くコミュニケートすることによって成果が上がるものであり、その意味では所詮わが国の「観光立国」メッセージは看板倒れである。
どうして国際交流という大事なことを、国はその主旨を対して真剣に取り組もうとせず片手間にやろうとするのか。これではまともな国際交流なんてできる筈がない。