1940.2012年9月4日(火) あの村木厚子氏が戦没者遺骨収集担当の社会・援護局長へ

 今日の日経夕刊を読んでいて官僚の人事異動欄に目が行き、はっと思った。内閣府へ出向の形をとっていた村木厚子氏が厚生労働省へ戻り、社会・援護局長に就任することになった。村木氏とは言うまでもなく、厚労省企画課長時代に「凛の会」と称する偽の障害者団体に特別郵便料金適用のために、部下が無断で公印を押捺した罪で虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われ逮捕された人である。その後部下が上司に無断で公印を押捺したことが分かり無罪となったが、検事の自白強要が問題となった事件としても国民的関心を集めた。

 その村木氏が就任することになった社会・援護局長は、主に戦没者の遺骨収集事業を取り扱う部門の責任者である。今や遺骨収集事業も戦後67年が経過して、難しい局面に立っている。戦没者の親はもちろん、妻や子ども世代の遺族も大分少なくなり、ややもすると事業も風化しかねない。戦没地における収骨は長年風雨に晒され、遺骨を捜すこと自体が困難であり、そこへそれぞれの国情や住民感情もあって思うようにいかず、年々収骨数は減少傾向にある。

 最近になって4年ぶりに日朝間協議が復活し、両国間の問題が話し合われているようだが、日本が懸案としている拉致問題が議題に上がったのかどうかが分からない。それと平行して民間レベルで、北朝鮮で亡くなった方々の遺骨の収集作業がテレビ公開された。これを契機に3万人とも言われている日本人の遺骨発掘作業が進むのではないかと期待されている。

 外国における日本人の遺骨発掘には当然高いハードルがある。これをこういう分野の経験がないと見られる新任の村木局長が、どうやって切り開いていくのか、幾分厚労省業務の中でも異色な分野であるだけに、簡単にはいかないだろう。かつて20年間に亘って中部太平洋地域を主に戦没者遺骨収集事業に関わっていた者として、村木氏の手腕を注視して見守りたいと思う。

 偶々今月発刊された中公新書の1冊に林英一著「残留日本兵」がある。昨日書店で買い求め、読んでいるが、あまりこういうテーマに取り組む作家がいない中で、20代の若い学者が意欲的に取り組んだことは評価したい。ただ、こういうテーマは取材相手がすでに生存していない可能性が高く、直に話を聞くことができないだけにどこまで事実と残留日本兵の主観的な考え方にアプローチできるか。まだ全体の1/3程度しか読み進んでいないが、資料では調べることができても、臨場感の伴う生の声が伝わってこない点に、やや物足りなさを感じている。

2012年9月4日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com