1962.2012年9月26日(水) 自民党新総裁に安倍晋三・元首相を選出

 今日午後行われた自民党総裁選挙は予想通り、国会議員と地方議員を合わせた1回目の投票ではケリがつかず、決戦投票に持ち越された結果、安倍晋三・元首相が第1回でトップだった石破茂・前政調会長に逆転勝利を収め新総裁に選出された。次の総選挙では自民党は民主党から与党の座を奪還する可能性が高く、その折は安倍新総裁が再び日本のリーダー、即ち次の総理大臣になるであろう。

 確かに安倍氏のおしゃべりは経験を積んで立て板に水の感じになってきたが、何とも中身が薄い。分かりやすい一般的なテーマなら今までの経験則から考えて喋るのはそれほど難しくはあるまい。だが、深みのある論題に対してしっかり理論武装した持論を開陳し、それを展開できるのか、そしてそれを根拠にディベートで相手を説得できるのか、極めて悲観的にならざるを得ない。敢えて言えば、安倍氏の理論構築はあまりにも表層的で、一国を代表するリーダーとして心許なく、とても納得できるものではない。

 元々右寄りの立場上今対立している中国に対しても強気の政策を進めるだろうから、反って中国の反発を買い、日中間の対立を益々加熱させることによって当分対立解消は期待できない。この人には総理大臣として一国をリードする資格と能力に欠けるのではないかと心配である。右翼的な勇ましい掛け声ばかりで、わが国の将来像をきちんと見据えた哲学や理念がほとんど感じられない。5年前に発刊された中公新書「美しい国へ」も陳腐な内容だった。国会議員というのは、どうして弱気で、かつて政権を放り出したようなこんな人物を総理の座へ押し上げてしまうのだろうか。こんなリーダーを戴くようでは日本は益々救われない。困ったことになりそうだ。

 さて、今日駒沢大学の清田義昭講師の講座では、2007年2月に放映されたNHK特集番組「焼け跡から生まれた憲法草案」ビデオを鑑賞した。終戦直後日本政府に対して占領軍が、帝国主義と軍国主義を排除した新しい憲法草案作りを命じた。巷間わが国の憲法は占領軍に押し付けられたものと信じられている。安倍自民党新総裁も、それ故憲法改正して自主憲法を制定すべきであると改憲論を持論としている。だが、このビデオを観る限り、必ずしも押し付けではなく、むしろ明治の植木枝盛、大正の吉野作造らの精神を取り込んで、終戦直後の昭和20 年11月に発足した憲法研究会委員7人衆が練り上げた「憲法草案要綱」に基づいて作られたものだと主張している。私もこのドキュメントを観る限り、日本憲法はアメリカから民主的たれとのアドバイスこそもらったが、その当時の日本の実情に合った自主的な憲法だと思う。実際、その経緯を追ってみると「天皇の主権」「主権在民」などが最も難しい課題だった。アメリカは日本が提案した憲法草案に対して、憲法が国家の最高法規であるとの表現が欠けていると物申したほかには、ポツダム宣言の精神、労働者の権利保護、国民投票採用、差別廃止などをアドバイスしたということのようだ。このビデオを観たところでは、それほど占領軍、つまりはアメリカの押し付け憲法という印象はなかった。

 ところでビデオに簑島清夫さんが登場したのには驚いた。しばらくお会いしていないが、箕島さんは憲法研究会委員で7人の中で唯一の憲法学者・鈴木安蔵が小田原の宿に滞在した、その宿・国府津館の主人であり、かつて仕事の場で何度もお会いしたことがある。

 1時間半のビデオは、改めて憲法誕生の内幕を見せてくれ、新しい事実も知ることができた。中々見ごたえのあるドキュメントだった。

2012年9月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com