専門家と我々の様な素人のドラマの見方と感想には、余りにも意外な隔たりがあると知り、少々ショックを受けた。それは、今週の日曜日の本ブログに触れたが、ちょうどその日にNHK大河ドラマ「べらぼう」最終回を終えたのを観て、その幾分批判じみた感想を書いたことから気づかされた。率直に言って「べらぼう」は、これまでの大河ドラマの中でも興味が湧かなかったドラマのひとつだった。ストーリーに一本本筋が通っておらず毎回内容が変わり易く、はっきり言って視聴者としては付いて行けなかったと言える。実際、毎週公表された視聴率ベスト20には、ついぞ顔を見せなかったほどである。妻も同様にストーリーが分かりにくいと言っていた。
ところが、一昨日朝日朝刊テレビ番組紹介欄に「記者レビュー」と題する小論が載っていた。その中で大西若人・編集委員が、べた褒めなのである。脚本に問題があると見ていた私には、意外にも「史実を踏まえつつ、活劇感や蔦重と花魁の恋路などの捜索を交えた森下佳子の脚本が出色」と私が自信を失うほどのえらい持ち上げ方である。友人らの評価を聴いても、何となく観ているが、ストーリーはよく分からないと言っていた。それが脚本が出色だというのだから、何と言ってよいのか分からない。こんな具合で来年度以降も同じように、脚本が出色な作品を大河ドラマとして放映されたのでは、もう観る気がしなくなるだろう。
さて、戦時中にこんな辛い生活を送った家族がカナダにいたことを初めて知った。それは、日本軍がハワイ真珠湾攻撃によって太平洋戦争が開戦された直後のことである。アメリカ国内の日系人は、強制収容所に収監されたが、カナダでは財産没収と同時に、国外追放を迫られた日系人がいた。カナダ生まれの日系人にとっては、如何に日系人とは言え、日本語を話せずして日本へ追放されることは、辛いことだった。それには、真珠湾攻撃と同時にイギリス領香港を日本軍が攻撃し、多くの香港在住のカナダ人が犠牲になったことがある。
1988年になってカナダ政府は、この時日系カナダ人に対して不当な取り扱いを行ったことを認めて、彼らに謝罪と補償を行ったという。当事者である日本人、そしてアメリカ人でありながら日系人として苦衷を飲まされた日系アメリカ人や、日系カナダ人のような戦争の被害者が沢山いるものである。どうあっても戦争は悲劇を生むばかりである。戦争は絶対避けなければならない。
ところが、事もあろうに高市首相に安全保障政策などについて意見具申をする立場にいる自民党の首相官邸幹部が、昨日日本を取り巻く厳しい安全保障環境を踏まえ、個人的な考えとして「日本は核兵器を保有すべきだ」との考えを示したというから、びっくりである。核不拡散条約との兼ね合いや、非核三原則などを承知している筈の担当幹部がこれだから、信用ならない。皆戦争の恐ろしさを口では言うが、実際には体験がないので、戦争の本当の怖さを知らないから軽薄に戦争へつんのめるのだ。こういう輩には、せいぜい自衛隊に体験入隊させて、実弾の飛び交う恐怖の伴う経験をやった方が良いと思う。恐らく高市首相は内心ではほくそ笑んでいるのではないかと思う。右翼思想の首相以下、現内閣は皆戦争大好き人間ばかりが群れ合う組織になっているのではないだろうか。全員改めて憲法を通読することを求めたい。