昨日の朝日夕刊の一面に「イラン 乾く古都と沈む街」と題してイランの世界遺産都市イスファハンの異常な渇水について書かれた大きな記事が載っている。イランには2度訪れているが、20年ほど以前2度目に訪れた時は、主に古代都市のペルスポリスとこのイスファハンを中心に訪れ、長い年月の間昔のまま保存された街の光景に触れ、感動したことを想い出す。
実はそのイスファハンが、他のイラン都市と同じように気温の上昇と雨不足が続いて河川や湖が干上がり、地下水の過剰なくみ上げによると見られる地盤沈下が進んでいるという。イスファハンには、中心部をザーヤンデ川が横切っていて、そこに独特のハージュ橋が架かっていてそれが何とも言えない魅力的な建築なのである。何とそのザーヤンデ川がほぼ干上がってしまったのである。今では渇水は世界的に共通した課題になってしまっているが、特にイランでは近年各地でダストストームと呼ばれる砂塵が舞い上がり、呼吸器の疾患のような健康被害が広がっている。このため、特に東部では村人が村を去り、打ち捨てられた村があるという。
それにしても残念である。イランは人々が優しく歴史と文化が根付いた都市は何とも魅力的で居心地が好い。それが失われてしまうとは、政治が何とか出来ないものかと思うのだが、政府に危機感はあれども予算も技術も欠けるようだ。そのためイランは地球温暖化対策の国際ルールである「パリ協定」に最初に署名した国であるにも拘らず、今では署名195か国の内最終的に批准をしていない3か国のひとつとなってしまった。かつて世界を席巻したペルシャ帝国もマケドニアのアレクサンドロス大王によって征服され、その後裔たちによる今の「イラン・イスラム共和国」も次第に存在感が消えつつあるようだ。あまりにも寂しいことである。
さて、長々と燻っていた柏崎刈羽原発再稼働問題も、昨日地元の花角英世・新潟県知事が容認する意向を公表したことにより方向性が定まった。日本のエネルギー政策は原発の活用を掲げているので、これにより前進することになる筈である。今年度内に柏崎刈羽原発7号機の内6号機の再稼働にメドが立ったことで、東京電力にしてみれば事故後初の原発稼働であり、一応首都圏の電力供給は安定性が高まる。
ただ、東日本大震災によって損壊し、放射能漏れを引き起こした東電福島原発があまりにも莫大な物心両面におけるマイナス面があっただけに、同じようなケースが起きた場合リカバリーをどう国民に訴え、理解してもらえるだろうか正念場となるであろう。東電も国民から厳しい目で見られ、廃炉費用などが経営を圧迫している中で、1基でも稼働すれば、年間1千億円の利益を改善することが出来ると見られている。まだ、続くであろう再稼働へ向けた動きの中で賛否両論をどう国民的利益の視点から決着をつけることが出来るだろうか。問題はまだ始まったばかりである。