イスラエル空軍機がパレスチナ自治区のひとつ、ガザ地区を空爆して、イスラム過激派組織ハマスから反撃を受け戦闘に火がついた。これまで危険な綱渡りのように、危ない均衡状態が保たれていたイスラエルとアラブ諸国のバランスが微妙に崩れた。これは単にイスラエルとハマスの戦いだけではなく、かねてからイスラエルによるイラン攻撃が懸念されていたように、他のアラブ諸国とイスラエルの多角的な局面での戦いが点火する危険性が増してきた。
18日になってエジプトが仲介したイスラエルとハマスの停戦交渉が平行線のまま終わった。
この先パレスチナを巡る駆け引きと交渉はどうなるのだろう。もともと好戦的なイスラエルはイランの核施設を攻撃すると度々公言していたが、或いは最近になってその機が少しずつ熟してきたのだろうか。
1967年勃発した第三次中東戦争では、アラブ諸国のうち、シリアはゴラン高原を、ヨルダンはヨルダン川西岸を、そしてエジプトはガザ地区をイスラエルに奪われ、アラブ諸国はイスラエルによって完膚なきまでに叩かれた。その直後に現地を訪れた時感じたアラブ人の怨念を胸に、長きに亘って反撃の機会を狙っていたアラブ側が、今月に入りついにシリアがイスラエル占領地に迫撃砲を着弾させ、一触即発の危険性は高まってはきていた。
今年6月ヨルダンとイスラエルを訪れた時に現地で感じたのは、お互いの反発や反感ではなく、むしろ意外なほど冷静な両国の感情だった。少なくとも敵対心とか、嫌悪感は表面上感じられなかった。それが第三次中東戦争の敵対国同士でありながら、陸路で国境を越えられる意外に緩い出入国管理に接してみると、事前に懸念していた両国間の強い怨念の篭った対立感情が和らいでいるのではないかとさえ思わせるものだった。
当事者が考えることと、我々部外者が感じることにはもちろん落差があるとは思うが、それにしても中東戦争当時の殺気立った雰囲気がほとんど感じられなかった6月の空気と、ここ数日のイスラエルとアラブ諸国の間に急激に高まってきた嫌悪感剥き出しの感情的な対立はどう理解したら良いのだろうか。
願わくは、戦火が地上戦へエスカレートして欲しくはない。