2017.2012年11月20日(火) ビルマ民主化とビルマへの経済支援

 再選後最初にアジア諸国を訪問先としたオバマ米大統領とクリントン国務長官は、昨日ビルマを訪れた。オバマ大統領にとってビルマは初めての訪問であり、アメリカ政府のビルマへの援助再開のスタートとなった。

 オバマ大統領のビルマへの訪問は、ビルマ政府に対する経済封鎖解除を世界へ訴える狙いがあった。大統領は滞在僅か6時間の間に、ティンセイン・ビルマ大統領と会談し、2年間で136億円の経済援助を約束した。

 昨日カンボジアで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席した野田首相も日本から500億円の資金援助を約束した。日米両国がビルマ政府の民主化進捗を歓迎してビルマへ援助を再開したのは、その一方で中国のビルマ国内におけるインフラ事業に伴う中国の圧倒的な存在感を少しでも抑えようとの思惑があるからである。

 そのビルマで民主化運動のリーダーで、国会議員でもあるアウンサンスーチーさんの政治家としての存在感が今少しずつ薄くなりつつある。月刊誌「選択」11月号に、「色褪せるアウンサンスーチー」として取り上げられているが、その副題にはやや悪意があるのではないかと勘ぐりたくなるような「政治家としては『役立たず』か」と極めて露骨で辛らつなタイトルがつけられている。

 今年クリントン長官が初めてビルマを訪れ、スーチーさんと会った時お互いに抱擁し、スーチーさんの不屈な民主化への不屈な行動を高く評価したクリントン長官だったが、どうも最近では政治家としてのスーチーさんの力量にやや疑問を感じているようだ。15年間も軟禁状態に置かれ、外部との接触を禁じられ、国民的人気がプレッシャーとなって下手に動くこともできず、また周囲にも必ずしも優秀な人材に恵まれているわけでもない。ただ、最もスーチーさんの評価を下げたのは、ビルマ国内の民族問題にスーチーさんが一歩引いた発言をしたことが大きく影響しているようだ。ビルマには現在少数民族だけでも130以上もあると言われており、複雑な民族問題が国内における大きな社会問題となっている。「選択」は西部ラカイン州で勃発した仏教徒と少数派イスラム教徒・ロヒンギャ族の衝突事件で、ビルマ国籍を与えられていない最下層の棄民・ロヒンギャ族に対するスーチーさんの対応について、「ただでさえ複雑な民族問題を抱える中で、国民ですらない『異教徒』に肩入れするのを避けた」と手厳しく非難している。

 しかし、これはスーチーさんには少々厳し過ぎると思う。15年間手足を縛られ、外との連絡も絶たれて苦しみながらビルマの民主化のために耐え続けて、1年前に漸く自由の身となって公に活動を始めたばかりである。ロヒンギャ族問題にしても情報のない中で、スーチーさんはほとんど何も知らされなかったのではないだろうか。今でもビルマ民主化のためには、スーチーさんはなくてはならぬ人であるし、彼女がいなければ、今日の民主化の芽もなかったのではないかと思う。

 中国のビルマにおける影響力をできるだけ排除したい日米両国としては、極力ビルマへ支援を続けようと考えている。日本としては、30年以上前には絶対額は少なくても、相対的に影響力があった存在感を再びビルマ国内で取り戻し、日本とビルマの経済的な友好関係を維持しようと考えている。

 アジアでもまだ充分開発されていない自然資源の宝庫であるビルマに対して、戦前から歴史的にも、ビルマ独立の過程でも強いつながりのある日本が、経済制裁解除を機に経済面ばかりでなく、人的交流の伴う文化的な援助を含めて援助の手を差し伸べ、中国とは違った形でその存在感を高めてもらいたいものである。

2012年11月20日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com