去る7日衆議院予算委員会で高市首相が、台湾有事に際して武力行使を伴う存立危機事態になり得ると発言したことに対して、中国政府は直ちに抗議し、発言の撤回を求めて激しく非難し日中両国が対立した不穏な状況に陥っている。中国は元々高市首相が軍国主義信奉者で、反中国的であると警戒していたところへ首相が中台問題に首を突っ込んでしまった。首相の言動には、元々うっかりすると触れてはならない、或いは触れない方が良いとされる領域へ、手を出しかねない予兆があった。今朝の朝日「天声人語」欄でも「要らぬことを言った」と批判している。しかし、この高市発言に対して中国の反発も聊か度を越している。日本は現在治安が不安定であるとか、中国人を対象に襲われる恐れがあるとか、およそ事実とはかけ離れた見当違いな情報により、日本へ渡航しようとする中国人に対して渡航自粛を促している。日本へ留学しようとする学生に延期を求めたり、インバウンド客の約3割を占める中国人観光客の抑制を図り、すでに日本入りの航空会社の運行を中止した。国際的な友好関係の礎は、そもそも人と人の交流によって育成されるものだが、それを根っこから摘み取ろうとしている中国政府の子どもじみた軽々しい行動には疑問を感じざるを得ない。
意外にもこの右翼志向の高市首相に国内では支持率が高く、朝日新聞の世論調査でも、支持率は69%という高い支持を得ている。その中で、日中両国の関係改善については、高市首相には僅かながらも「期待出来ない」44%が43%の「期待出来る」を上回っている。支持層の間でも日中関係だけは、期待出来ないという不安があるのだ。高市首相の言動が警戒されるのは右翼志向で、この先日本のリーダーとして外交、内政に充分な力を発揮出来るだろうかという懸念である。また、他の国との間でもトラブルを生まなければ良いと祈るような気持ちである。
最近この他にも自民党内に右翼的な芽が吹きだしつつある。16日付東京新聞「本音のコラム」欄に前川喜平・元文科省事務次官が次のようなことを書いている。自民・維新政権合意書に基づき、政府は自衛隊の階級を「国際標準化」して、「1佐」を「大佐」に、「1尉」を「大尉」に変更することなどを検討しているそうである。木原官房長官は「国際標準化」して自衛隊員に高い意識と誇りを持ってもらうと語ったが、すでに1佐も1尉も英語では[COLONEL]や、[CAPTAIN]のように国際標準化されている。むしろ国際標準化ではなく、「旧日本軍化」であり、漢字を理解する中国人には無用な脅威を与える旧日本軍人化は即刻中止すべきであると、至極妥当な考えを主張している。
それにしても高市首相の台湾有事に備えた余計な国会答弁には、大きな収入源だったインバウンド業を収縮させる可能性がある。首相には責任ある立場にいるだけに、もう少しあらゆる点を弁え、チェックしよくよく考えたうえで発言してもらいたいものである。