今日は朝からしとしと雨が降っている。今日行われたラグビー早慶定期戦は今年で89回目になるが、その昔試合日時を決める際雨天を避けようとそれ以前の天候をすべて遡って調べた結果、一番雨の確率が少ない日時ということで、早慶ラグビーは今日11月23日に行われることが決定された経緯がある。爾来11月23日に雨が降ったという記憶は、これまでのところ私にはまったくなかった。
それが晴れるべき今日、秩父宮ラグビー場が雨だったせいでもあるまいが、慶應は前半終了時点で10対10の同点だったが、後半立て続けに3トライを奪われ、結局31対10で早稲田に屈してしまった。
さて、昨日鳩山由紀夫・元総理大臣が政界引退を表明した。本人は立候補に当って所属の民主党から党公約承認の誓約書に署名を求められたことを不満に感じ、唐突に政治活動から身を退くことを決意した。身内の要求にいちいち腹を立て、個人的なわが侭を貫いて決断しているようでは政治家として余りにも子どもっぽくはないだろうか。これが気に入らないなら、せめて堂々野田首相と丁々発止と議論を交わしてみたらどうなのか。それもしないで、ただ気に食わないと辞めるのでは、まるで腕白坊主と変わらない。世間から同情の声はもちろん、惜しいとの声も聞かれない。元首相の勇退にしてはあまりにも寂しい。元々期待されるような人物ではなかったということだろう。確かに本人にとっては極めて不本意であったかも知れないが、そもそも民主党政治の混乱を引き起こした張本人であると世間から批判を受けたことは間違いない。これは偏に鳩山氏自身の不徳の致すところであり、鳩山氏も素直に自らの不徳を認めざるを得まい。
3年前の総選挙ではそれまでの自民党政権の旧態依然とした旧弊体質の政治が嫌われ、リベラル政党として人気が出て明るい友愛政治を打ち出した民主党が、第1党を勝ち取り政権政党となった。民主党代表だった鳩山氏が総理大臣となったが、いかんせんその資質に欠けた鳩山氏は前後の見境もなく、実行不可能な夢のような政策を口走り、国民に政治への不信感を与え、結果的に自らを苦しめ、総理の座を1年足らずで降りる羽目になってしまった。
加えて母親の資金違法提供問題が明るみに出た。この時の母親離れしていない、おろおろしたひ弱なお坊ちゃん体質は、とても一国の総理の行動とも思えなかったほど未熟でお粗末だった。現状ではとても無理と思われていた、沖縄からの米軍基地撤去、同時に最低でも沖縄の基地の県外移転の方針も空回りするだけで、とどのつまりは自らの首を絞めてしまった。お坊ちゃん育ちで空気を読めない世襲政治家の限界である。あまり同情的なコメントは同僚議員の中からも寄せられていないが、とりわけ武村正義・元新党さけがけ代表には「世間を騒がすのが目的で政治人生を続けている男なので、総理までやって満足じゃないか」と辛らつにこき下ろされている。
総理を辞めた後に一国会議員でいることは疑問だとして一旦は引退を表明したが、舌の根も乾かない内に、前言を翻して総選挙に出ると賜ったのである。そのうえ、今度は先日北海道の選挙事務所で出陣式を行ったばかりで、いざこれからという時の引退だけに地元の支援者の中には面食らい呆れている者もいる始末である。普段から心配してくれる周囲の人たちにもまったく配慮することを忘れた人である。誠実であることを求められている政治家でありながら、最も誠実さに欠けた人物だった。
鳩山氏のこれまでの行動には、市民感覚からずれる点がしばしば見られた。市民目線から大きく逸れ、苦労を知らない無邪気で無責任な発想と言動しかなかった。これこそお坊ちゃん世襲政治家の典型的な成れの果てだろう。
さて、民主党は今回の総選挙に当り、党として新たな世襲政治候補者を例外なしに公認しないと決定した。羽田雄一郎・国土交通相は父羽田孜衆議院議員・元首相勇退に伴う長野三区小選挙区に参議院議員からの鞍替えを認められず、党の世襲議員反対の内規を受けて総選挙に立候補しないことになった。
これに対して自民党はどうか。前回の総選挙でははっきり世襲禁止を打ち出していたにも拘わらず、前回の「3親等以内の同一選挙区からの立候補を認めない」とのマニフェスト公約をいとも簡単に覆して、世襲候補者を容認し、立候補を認めることへ主張を変えたのである。しかし、これは自分たちが世襲制にしがみついていないと生きていけないとの自信のない自覚から決めたものである。明らかに都合の良い自分勝手な考えであり、断じて選挙で国民に求めるべき贅沢や甘えであってはならない。世襲制に凝り固まっている自民党指導部内では、世襲制が選挙で完全な不平等と差別を実行していることに気付いていないのだろうか。「地盤、看板、カバン」を黙ったまま引き継ぐことができるというのは、それがない新人にとってはその時点ですでに優位に立っているではないか。優秀な人材なら世襲議員でも良いではないかと開き直る石破茂・自民党幹事長自身世襲議員であるだけに説得力がない。それなら同じスタートラインに立つ他の選挙区で立候補したらどうだと言ってやりたい。
自民党には、安倍総裁以下何と約4割の世襲衆議院議員がいるせいか、正論を言えず世襲制度を何とかして護ろうとする照れくささと弱みがある。政策立案を述べる前に正々堂々と平等な立場で戦ってはどうか。今まで自民党から輩出した首相は最近ではほとんどが世襲政治家である。これこそ世襲制が有利である何よりの証拠ではないだろうか。
野田首相からはルパン3世ではないと皮肉を言われ世襲を批判された。朝日新聞の今日の社説でも政治は家業ではないとまで厳しく非難されている。
ここで自民党が世襲制を止めれば、平等・公平を重視する党として改めて評価が上がると思う。上から下の1年生議員まで世襲議員だらけの自民党も、世襲制のためばかりではあるまいが、でき損ない首相となった鳩山由紀夫氏を他山の石として、世襲制などという国民を舐めたアンチ自由レジームにしがみついているのを止めてはどうか。