突然の騒ぎに驚いた。しかも、場所が選りによってペルーの世界遺産として観光客に、世界的に最も人気の高い古代インカ帝国のマチュピチュである。住民の一部が、バス路線の新規開通を求めて当局と話し合ったが、認められず、不満を抱いた住民が鉄道線路に丸太や石を置いて鉄道の線路を封鎖したことによるデモ騒ぎで、列車が停まり外国人観光客らが遺跡へ行けなくなってしまったのだ。現在1日4千人もの観光客が訪れ、普段からオーバーツーリズム現象が起きていた。それに対応すべく近年入場制限を設け、そのため観光客がマチュピチュへ入れず足止めを食わされることが多くなった。地元民としても痛しかゆしで世界的観光地としても頭の痛いところである。
マチュピチュは、世界遺産として登録されると同時に、他の①万里の長城、②ヨルダンのペトラ遺跡、③ローマのコロッセオ、④マヤ文明のチェチェン・イッツァ、⑤インドのタージ・マハール、⑥ブラジル・コルコバードのキリスト像、と並んで「新・世界七不思議」として知られている。
このデモ騒ぎや、住民の不満などに頭を痛めた認定団体「新・世界七不思議協会」では、スケールの大きい「新・世界七不思議」のマチュピチュの在り方に何らかの規制を課すことも検討しているらしい。折角世界的に圧倒的な人気があり、価値の高い遺跡で簡単には訪れることが出来ないような観光地だけに、上手く元の鞘に納まってくれることを願って止まない。
個人的にはこれまで七不思議のすべてを訪れており、それぞれに感動した格別な想いがある。その「世界七不思議」の中であまり歴史的な価値がないと思うのは、コルコバードのキリスト像である。これは1922年ブラジルの独立100周年を記念して建設されたもので、今から40年ばかり以前に訪れたことがあるが、コルコバード頂上近くまでロープウェイに乗って辿り着いた。眼下にはコパカバーナ海岸などリオ市街一帯が魅力的な光景を見せている。コルコバードは少々珍しい花崗岩石の岩山ではあるが、他の6つの「世界不思議」に比べて、歴史がないだけに他の6つの遺跡に比べれば、やや価値が落ちるかも知れない。
やはりこの中で素晴らしいと思うのは、万里の長城とペトラ遺跡だと思う。万里の長城は紀元前7世紀ごろから建築が始まり、西暦15世紀ごろに完成した大規模な工事だった。ペトラ遺跡も紀元前1世紀から西暦1世紀にかけて建設された歴史的にも高い価値のあるもので、傍にいるだけでも感動する。次いで歴史的には、ローマのコロッセオが西暦70年ごろ建設に着手したと伝えられているが、やはり古い建築物には魅力がある。その点では、マチュピチュは15世紀に栄えたインカ文明であり、歴史的価値よりアンデスの山中の異質な地形に築かれた石造りの神殿と段々畑のような街づくりが興味深い。やはり40年ほど前にブラジルを訪れた後で、訪れたが、当時の列車は現在クスコからマチュピチュの下まで運行されている列車に比べると大分お粗末だった。それでも懐かしさは並ではない。