今年は徳川政権が倒れ、武家社会から明治の近代社会に入った。爾来157年となるが、今朝の朝日新聞(東京本社版)が発行されてから今日でちょうど5万号になったという。創刊号が発行されたのは1888年7月10日で、朝日が大阪版を発行したのは、それより9年前の1879年1月25日である。また、新聞休刊日というのが設定されているので、連続ということではないが、5万号にまで辿り着くには、戦争や、自然災害など幾多の苦難があったことと思う。世間情勢のキャッチに一番近いところにいるメディアとして、新聞は世間の荒波をまともに受けてきた。今朝の紙面を見ると過去5万号の歴史的事象が取り上げられ紹介されている。日清・日露戦争、第1次世界大戦、関東大震災を過ぎて太平洋戦争は2万号によって報道された。微笑ましい話題もあったが、概して世の中を暗くするようなスキャンダルや、9.11テロ、東日本大震災など自然災害が紙面を占めることも多くあった。読売、産経など政府寄りのメディアに対して朝日や東京新聞はリベラルと言われるが、比較的穏当な立場を貫いていると思う。それでも、1931年に満州事変が勃発してからは、朝日も当時軍部の圧力の下で社論を軍部の満州での行動を支持する立場を取った。太平洋戦争終戦後報道姿勢を反省し、言論の自由を貫く姿勢に変わった。これからも今の姿勢を堅持して権力に媚びず、独立自尊の立場を貫き続けて欲しいと思う。
しかし、海外の戦場などでは、日本人記者の姿を見ることが少ない。それは、もし不幸にして記者が殉死するようなことになったら、会社として本人、並びに遺族に対して相当な補償をしなければならないことから極力危険な紛争地帯で取材することを警戒し、規制をしているのではないかと思う。しかし、それでは日本人が取材する日本人向けの臨場感に溢れた記事が少なくなり、新聞自体のパンチが効かなくなると思う。この辺りを新聞社はどう考えているのだろうか。
さて、今月13日国連総会でイスラエルとパレスチナの2国家共存による決議案がアメリカ、イスラエルが反対する中で、日本を含む142カ国が賛成し賛成多数で採択された。この限りでは、日本はアメリカと反対の立場に立った。ところが、昨日岩屋毅外相は、来週開かれる国連総会の場では、パレスチナ国家承認を見送る意向であると表明した。これが日本としてこれまで国際社会に示してきた姿勢である。2国家共存には賛成するが、パレスチナを国家としては認めないという少々矛盾した態度である。しかも厭らしいのは、アメリカ政府が、日本政府に対して承認を見送らないよう圧力をかけてきたことである。外務省関係者はこの点は否定し、あくまで日本が独自に考えた方針であると主張するが、内密にアメリカが日本に仕掛けたことは明らかである。
この点については、昨日衆議院予算委員会で日本共産党の田村貴昭衆院議員が、2国家共存と国家として認めないという矛盾した方針を止め、直ちにパレスチナ国家承認が紛争解決の唯一の道だとして、政府にパレスチナ国家承認の決断をするよう求めた。しかし、政府はトランプ大統領の顔色を窺いながら、あくまで「NO」ということだろう。
最近までとかく批判的に受け取られてきた従来のイギリス政府の二枚舌外交と同じような顰蹙を買うやり方である。トランプ如き怪傑に惑わされず日本政府としての考えをしっかり固め、主張すべきである。