昨日9月2日が日本に勝利した日として祝われる中国北京では、今日「抗日戦争勝利80周年」の派手な軍事パレードが行われ、ロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記らが出席し、壇上からパレードを見守った。アメリカのトランプ大統領が主唱する「アメリカ・ファースト」のせいか、中国、ロシア、北朝鮮のような欺瞞的社会主義国家の結束を内外に知らしめるために、中国は先頭に立ってとかく派手なパフォーマンスを演じている。以前は50カ国近い首脳が出席されたが、今年はイラン、インド、マレーシア、インドネシアなど26か国の首脳が出席したに留まった。
その一方で、敗戦国の日本は終戦記念80周年を迎えた8月15日には、過ちだった戦争を2度と繰り返さず、平和を希求して行くことを誓った。戦勝国と敗戦国にとってともに戦争を2度と起こさない信念は同じようなものだが、戦勝国の中国にとっては、いかに中国人が戦争で残酷な体験を味わったかを世界に知らせようと願った。この夏2本の反日戦争映画が大々的に企画され、その内1本が上映され多くの観客を呼び込み異例なほどの興行収入を得た。
そのひとつは、1937年に起きた南京事件を題材にした「南京写真館」で、7月25日に中国国内で公開されてから観客が増え続け、興行収入ではトップを走っている。当然反日的な視点で撮影された映画であるだけに、映画鑑賞後にほとんどの観客が日本に対する恨みつらみを吐露し、日本なんかについて考えたくないと強く反日感情を露わにする人もいた。中には、日本へ旅行する自国民の気持ちが分からないと、今年になって訪日外国人観光客トップになった同胞の気持ちが分からないと言っている。
もうひとつの映画は、すでに完成され公開を7月31日と予定したが、現在無期限延期となっている。タイトルは「731」で、戦時中中国東北部で細菌部隊として活躍した関東軍の「731部隊」から引用したものである。タイトルも旧日本軍部隊名を借用しており、今「南京写真館」がヒットして強まった反日感情を更に加速させるのではないかと、ここは間を置いていずれ公開するとの方針のようである。ただ、一部には公開日が、9月18日と報じられたが、これは満州事変につながった柳条湖事件勃発の日である。また残虐なシーンが若年層に与える悪影響が指摘されているだけではなく、今後の日中関係の冷え込みにつながるのではないかと懸念の声も中国国内で生まれている。
中国政府としては、国民の愛国心向上のためのキャンペーンを試行していて、すでに公開した「南京写真館」について、反ファシズム文藝の重要作品として讃えているようだが、そこには相手国(日本)に対する配慮とか、友好関係の構築などについてはまるで考えてもいないようだ。
トランプ大統領により「アメリカ・ファースト」が叫ばれてから、アメリカの自己本位な言動が些か気になっているが、かつての日中戦争をダシに中国が「中国ファースト」を言い出すのではないか、その点も気になっている。