80年前の今日午前8時15分広島へ原爆が投下され、一瞬のうちに約10万人の罪のない市民が命を奪われた。今日は広島市内の平和公園で平和祈念式典が行われ、石破首相をはじめ、過去最多120の国と地域から大使や外交官などを主に、5万5千人もの人々が参列したのには些か驚いている。「平和」を名乗るイベントにこれほど多くの人が参加するのは珍しいのではないだろうか。
原爆を投下し、多くの後遺症を残すような死傷者を生んで、今や世界的に非難され核兵器使用反対運動を起こさせるきっかけを作ったアメリカに、果たしてどれほど加害者意識があるのか、アメリカは毎年出席するに際していつも消極的な姿勢である。今年6月にもイスラエルのイラン攻撃に続き、アメリカがイラン国内3カ所の核施設を空爆したことを、事もあろうにトランプ大統領は、広島と長崎への原爆投下が第2次世界大戦の終結につながったような発言をして、日本国内から憤りの声が上がった。トランプ大統領を始め、大方のアメリカ国民はトランプ氏と同じような考えなのではないだろうか。原爆投下により広島で約14万人、長崎で約7万人が亡くなった。原爆関連で亡くなった349,246人の犠牲者の名前が平和公園内の原爆慰霊碑に納められているが、今日この1年間に亡くなった人や、死亡が確認された4,940人の名前が書き加えられた。これほど多くの犠牲者を生んだ原爆投下について、残念ながら加害者側にはあまり反省の気持ちが見られない。今や被災者の平均年齢は86歳を超えてしまった。
現在の好戦的な世界情勢と、事態解決のためには原爆使用も認められるとのトランプ大統領が考える主張は、単に大国の身勝手な独善的考えであって、これでは戦争が止むことはない。
実際トランプ大統領は、いかなるシチュエーションでこんな原爆犠牲者や被災者の気持ちを無視するような発言を行ったのか。トランプ氏は、先日オランダで開かれたNATO(北大西洋条約機構)の首脳会談で、まずルッテNATO事務総長にイランへの核施設攻撃について「広島や長崎を例として使いたくないが本質的には同じだ。戦争を終わらせた」と述べた。そして、同じ日に行われた記者会見でも「広島や長崎を見れば、あれが戦争を終わらせたことが分かる。これは違う形で戦争を終わらせた」と別の本音を述べている。これに対して被爆者の受け止め方は、「アメリカの大統領からどうしてこういう乱暴な発言が出るのか不思議で仕方がない」、「大統領は被爆者がこの80年間どれだけ苦しんできたか理解していない」、「原爆投下はいかなる理由があってもやってはいけないことで、正当化するような発言には怒りしかない」と厳しい批判的な反論が出ている。
今から半世紀ほど前に旧厚生省の太平洋戦争戦没者遺骨収集事業に関わっていた当時、毎年ミクロネシア連邦を訪れていたが、その折に広島へ原爆投下したB-29 爆撃機「エノラ・ゲイ」が飛び立ったテニアン島北飛行場滑走路に小さな記念碑が建てられているのに気づかされた。正にここから原爆を積んだB-29が広島へ向けて離陸したのである。その結果が、80年経っても解決しない核賛否論を繰り広げているのだ。その場にいた時は、へぇ~こんな小さな飛行場から飛び立ったのだという事実だけに驚いたものだが、その後その重大さが募って頭から消え去らない。ほとんどの日本人は知らないが、日本人にとっては恨み骨髄の飛行場であることをアメリカ人はどこまで知っているだろうか。恐らくトランプ大統領も知らないのではないだろうか。