昨日日本列島を襲った津波の破壊力には恐れ入った。事態が発生してから各テレビはほとんど途切れる間もなくずっと同じような報道を続けていた。北海道から沖縄まで21の都道府県で、200万人以上の人びとに避難指示が出された影響は大きかった。気象庁が公表したマグニチュード8.7(欧米ではM8.8と報道されている)は、1900年以降に世界で発生した地震の中で8番目に大きいものだった(東日本大震災は、M9で4番目に大きかった)。
カムチャツカ半島周辺では過去にも大きな地震が発生しているが、今回は半島から太平洋沿岸一帯にその影響が及び、アメリカのアラスカ、ハワイ、マリアナ諸島にも津波が押し寄せた。近年日本ではしばしば地震が起き、気象庁ではしきりに地震に警戒するよう警告している。そのせいで、今回は津波警報が発せられるや比較的多くの人々が高台など安全な地域へ無難に避難したようである。また、東日本大震災の被災地に多く津波が襲来していたので、日ごろ避難訓練を続けてきた住民の手際の良い避難が、目立ったのだろう。すべての津波警報が解除されたのは今日午後4時半になってからだった。
私自身海外で地震に遭遇して想い出すのは、1999年8月17日にトルコで起きたイズミット地震である。M7.6だった。真夜中でぐっすり眠っていたホテルの一室で突然大きな揺れでたたき起こされた。慌てて貴重品だけを手に、階段をロビーまで駆け下りてケガもなく失うものもなかったが、驚いたのはその後イスタンブールへ来て市内のビル街を見た時だった。街の建物は大きく破壊され、アパートのような手抜き建築のビルはかなり倒壊していたが、その一方でイスラム教の古い教会とか、モスクなどはびくともしていなかった。特に、地下宮殿と呼ばれるバシリカ・シスタンで、東ローマ帝国時代に地下の貯水槽に建てられた宮殿は、地震に対してびくともしなかった。近くには近代アパートがボロボロになって崩壊しているのにである。
それにしても不意に襲ってくる自然災害とは恐ろしいものである。まだ事前予知能力が及ばず、普段から備えをするより術がない。
さて、今朝の朝日新聞社説に珍しくも「夏休みの読書」として、「世界を広げる『旅』に」と夏休みに子どもたちに読書を勧める文章が掲載されていた。ある大学教授が、知識が増え、国語の勉強になるとそのメリットを挙げている。そのうえで「しっかりとした自分の考え方の土台をつくること、人生の選択肢を広げること」を求めて付け加えている。
僭越だが、私自身子どものころから本を読むことが好きで読書することによって随分いろんなことを学んだ。成人になってからの読書は、自分の考え方の原点を培うことで役に立ったと思っている。子どものころに読んだ本が、今でも忘れられない。例えば、小学生のころは、芥川の「蜘蛛の糸」や漱石の「坊ちゃん」だった。中学生になると吉川英治が週刊誌に連載中の「新平家物語」、読売新聞に連載された子母澤寛「父子鷹」、そして高校に進学してからは「破戒」や「復活」、「モンテ・クリスト伯」などを読んだ。「復活」や「モンテ・クリスト伯」、「風とともに去りぬ」、「赤毛のアン」などは、後年ストーリーの舞台現場を訪れたこともあり、原作の裏付けを取ることも出来て印象深い気持ちを抱いたものである。
日刊新聞には、偶には今日の社説のように難しい政治や経済を論じるだけではなく、スマホに気持ちが向きがちの子どもにも参考となるようなことを書いて欲しいと思う。