6650.2025年7月28日(月) 手紙を書かないから郵便事業が落ち目になる。

 どうも郵便事情の低迷は日本だけの問題ではないようである。基本的には、郵便物の回収と配達に時間と経費が掛かり過ぎることが郵便事業の財政を圧迫しているようだ。

 デンマークでは今年中に全国にある1,500の赤色ポストが撤去されるという。手紙の配達量は、2000年には14億5千万通もあったものが、昨年24年には、僅かその1割にも満たない1億1千万通にまで減ってしまったのである。これでは採算がとれなくなるのも当然である。郵便制度は単に配達する、利益を得るという話ではなく、手紙を通して繋がりをもたらすものであるという考えがある。低迷の原因はスマホやパソコンにやられたというのが実情である。

 日本でも郵便物数が激減しているのは同じである。2001年度のピーク時には、全国で263億通あった郵便物数は、24年度には125億通と半減した。今では土曜や、翌日の配達をなくし、昨年秋には郵便料金の大幅な値上げもしたが、抜本的な解決には至っていない。赤いポストで長年親しまれた郵便ポストは、現在全国で17万本余もある。23年に調査したところでは、1カ月当たりの投函が30通以下、つまり1日1通以下しか投函されない郵便ポストが全体の4分の1の約4万4千本もある。これでは思い通りにペイしなくなり、経費倒れになるのも理解出来る。

 問題はこの郵便局の体制だけではなく、国民の間に郵便物を書いて投函する人が少なくなったことである。このことは取りも直さず、国民が手紙を書かなくなったことを表している。スマホのやり取りでほとんど意思を伝え、ペンを取って手紙を書く習慣が少なくなっていることが懸念される。手紙が書けなくなることもさることながら、文章をまとめて書く力が付かず、文章力が落ちていることが心配である。

 因みにデンマーク以外のヨーロッパの国々ではどんな状態かと覗いて見ると、どこの国も郵便事業には悩んでいるようで、イギリスでは旧政府系企業の親会社がチェコの実業家によって買収され、土曜配達の中止と平日配達は隔日を制度化している。フランスでは利用の少ない郵便ポストを撤去したようだが、日本ではとても無理だと思う。ドイツでは過去20年間で8千人の人員削減を発表した。どこもビジネスとしては成り立たない事業となっているようだ。

 その中で民営化して20年が経つ日本は、どうだろうか。公営だった郵便事業が、民営化することにより利益を生み出し、郵政が発展するとの小泉純一郎元首相の思惑を実現したが、そうは問屋が卸さなかった。このままの状態が続けば郵便事業の経営を圧迫して倒産という最悪のパターンも考えられないこともない。そのためついに奥の手を使い出した。郵便局網の維持に年間1兆円のコストがかかることから、郵便局長組織の政治力を背景に、年間650億円規模の公的資金を引き出す法改正を国会に提案している。しかし、事業の基本である収入の増加を考えることを忘れてはならないと思う。時間はかかるかも知れないが、学校教育の場を通じて子どもたちが手紙を書く習慣を身に着けることに真剣に、そして前向きに考えるべきではないかと思う。

2025年7月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com