去る6日から天皇・皇后両陛下が、初めてお揃いでモンゴル人民共和国を国賓として公式訪問されている。昨日は、雨の中を広大な沃野の小高い丘の上に、2001年日本政府が建設した立派な「日本人死亡者慰霊碑」に慰霊参拝され、亡くなられた方々のご冥福をお祈りになった。その場で父親を亡くされた88歳の女性と見慣れた懐かしい男性が両陛下のお言葉を聞いておられたが、その男性こそ水落敏栄・日本遺族会会長で、ほぼ半世紀前に厚生省の戦没者遺骨収集事業に関わっていて、20年以上も毎年のようにともにサイパン島へ渡って収骨作業に関わった遺族会のスタッフだった。敗戦によりソ連領シベリアに強制的に抑留され、多くの日本兵や民間人が強制労働と飢え、寒さのために犠牲になった。約60万人が抑留され、その内5万6千人が死亡したとされている。とかく目がシベリア方面にばかり向くが、モンゴルでもシベリアから移送された抑留者が約1万4千人いて、その内1,700人が亡くなられた。
モンゴル大統領ご夫妻による歓迎式典では、天皇はモンゴル語を交えて挨拶されたり、国交35周年記念コンサートでは、天皇はステージに上がり馬頭琴オーケストラとともにビオラを演奏されて、とても和やかな雰囲気の中を万雷の拍手を受けられていた。今回は8日間と比較的長い滞在であるが、両国の友好関係が一層緊密になるよう努めておられる。
さて、数日前の新聞に航空会社と鉄道会社が、現場で動きやすいようにと現場の作業員が革靴やハイヒール以外に、スニーカーを履くことを認めると書かれていた。一般的にオフィスの服装としては、とりわけ営業関係では、相手に失礼でなく、見苦しくない服装を心掛けるよう求められている。私の場合は、新入社員として鉄道会社へ入社後見習い駅員を1年半務めた時、会社や駅から制服を貸与され革靴については、特に注意されるようなことはなかった。ただ、当時改札係を務めながら降車客から使用済みの切符を受け取っていたところ、不正乗車客が結構いることが分かった。中には、それらしいと目を付け乗客に問い質すと、しばらくして、「ばれた!」と思ったか、不意に逃げるお客がいた。そこで、追いかけやすいようにそれまで履いていた革靴をスニーカーに代えて改札口に立っていた。不正乗車の降車客もまさか駅員が追っかけてくるとは思ってもいなかった。ところが、逃げる途中で追いかけて来る私の姿に一瞬驚き懸命に走った。それを追いかけ、観念させて不正乗車客として扱ったものである。
大体駅員が追いかけるのを見れば、大人しく非を認め謝罪するものだ。だが、それでも若い男の中には、捕まったら大変だという意識と逃げ切れるという自信があったのだろうか、その駅員時代に3件ばかりスニーカーを履いて不正乗車客を追いかけ捕まえたことがある。
一つ目は、交番の前を走って逃げたが、大きな声で「ドロボー!ドロボー!」と連呼しながら追いかけたせいで、交番からおまわりさんも飛び出し一緒に追っかけた。これには不正乗車客も諦めて、大人しく降参した。残りの2件は、いずれも大学生だった。2人とも改札口から追いかけて背後から得意のタックルで倒した。やはりスニーカーは軽く動きやすいので、業務上もあまり気を遣わないで済んだ。
久しぶりに新入社員時代の駅員を懐かしく想い出した。
ただ、天皇・皇后の公式行事中に少々非礼なエピソードを書くことになってしまって、若干後ろめたい気分である。