私自身はもちろん、世界中の人々は今日も生きている。マヤ暦による地球終末の日の昨日、地球には大きな変化もなければ、況や消滅なんてなかった。マヤ暦の噂の予言は空振りに終わったのだ。マヤ暦の正確性と精緻な技術は別にして、2012年地球終末のご託宣は迷信にしか過ぎなかったということを示しただけだった。
さて、今月14日アメリカ政府国務省のベントレイ報道部長が、尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲であると中国側に伝えたことにより、表向きは中国が尖閣諸島を攻撃することが難しくなったと15日の本ブログに書き込んだが、それは条件付きだった。安保条約第5条に盛り込まれているアメリカの防衛義務が国防権限法で認められることがその条件だった。昨日上院は2013年度国防予算の枠組みを決める同法案を可決した。これにより日米安保条約第5条に基づき、有事の際は日米が協力して仮装敵国を攻撃できることになった。結果として中国は日本領土の尖閣諸島にうっかり手を出せなくなったわけである。このところ日本領空海を度々侵犯している中国の出方を今後注視する必要はあるが、日米安保条約は中国にとって嫌な行動規制となるだろう。この現象だけを見れば、「60年安保」で安保条約反対運動に参加した私としては、忸怩たる思いと同時に、不思議な感覚に捉われるが、言い訳がましく言うならその当時安保が破棄されていれば、別の平和への道のりがあったことは間違いない。そして、その別の国づくりの中で今日の中国と顔を合わせることになるわけである。
今はどんな形であれ、日中間に何らかの抑止力が働いて武力行使などのトラブルが発生しないように願うばかりである。
ところで、昨日の朝日朝刊「オピニオン」に丹羽宇一郎・前中国大使へのインタビュー記事が掲載されていた。大変お気の毒な辞め方をされてつい最近帰国された。赴任当初は鳴り物入りで大型民間外交として期待され、伊藤忠商事での中国との商取引経験を活かして日中友好に尽くしてくれるものと思われた。それが志半ばで帰任を余儀なくされたのである。2年4ヶ月の任期を終えて帰ってはきたが、任期を全うしたわけではなく、何と日本政府によって罷免されたのである。日中友好のために力を注いでいた丹羽氏の心中を察すると忍びない気もする。
石原・前都知事が打ち出した尖閣諸島購入計画について、そんなことをやれば日中関係は重大な危機に遭遇すると語ったことが、一部の右派系民主党議員の心証を損ね政府内部からも批判されて罷免されることになった。初の民間大使として期待して送り出した政府が、職責を尽くす自国の大使を公然と非難したことが海外でも皮肉な見方で取り上げられた。これに対して丹羽前大使は一切言い訳はしないが、「石原氏の尖閣発言をなぜ首相は止めないのか。こんなことをしたら世界の信を失う」と任命権者である野田首相を強く批判している。
これで今後大国への民間大使の芽はなくなったのではないかと思うと残念な気がする。