日本ペンクラブから浅田次郎会長名で書状が送られてきた。文字がやや大きいが、A4判4枚に文章がきっちり書き込まれている。「国際ペン東京大会2010における諸問題の反省と改善」と題して、一昨年9月に開催された国際ペン大会の大赤字の会計処理について、会長として事情説明と会員の理解を求める書状である。
私も京王プラザホテルで開かれたパーティに2度参加して、ほとんどのペン幹部が自画自賛しているように、大会自体は成功だったと考えている。ただし、浅田文書にも書かれているように会計処理があまりにも杜撰で、穴の開いたバケツの中へ会費を放り込み仕事をしていたのではないかと考えざるを得ない。
大会後しばらくして、そのお粗末な会計についてメディアでも大きく取り上げられた。特に、毎日新聞は当初から不適切会計として内偵していたようだが、昨年5月21日付同紙で「臭いものには蓋」的な対応を取ろうとするペンに対して公益法人としてあるまじきと厳しく非難した。昨年5月25日開催のペン総会には私自身も出席したが、やはりかなりの会員から会計処理を承認できないと、執行部に対して厳しい声が上がった。その結果、新会長に選出された浅田氏が、調査委員会を設けて調査報告書を作成するとその場で約束せざるを得なかった。
その調査報告書は一応今年5月総会で了承され、大量の資料は会員なら事務所で閲覧可能ということで手打ちとなりつつあった。だが、簿外口座の開設やら大幅な予算超過について責任の所在などの点で納得できない会員がいることを配慮して、その間の経緯の要旨を認めたのが今日受け取った書状である。
それによれば、1.実行委員長(当時のペン会長・阿刀田高氏)と幹事長(吉岡忍・常務理事)の責任、2.事務局員の責任、3.実行委員の責任、4.財務室の刷新、5.総括、とされている。現状では大会成功に向けた勇み足で、誰にも悪意はなかったと理解して、無報酬の幹部の責任追及はしないことと、雇用されている事務局員は処罰が当然と思考するが、就業規則に賞罰条項がない、などの理由から処罰をしないことになった。
波風を立てないようにとの浅田会長の考えは分らないでもないが、事前に責任者の了解を得ることもなく予算外の過剰支出を行って多額の赤字を出して不適切な会計処理を行った当事者の責任は誰一人として負うことがないことになった。いつまでもこの問題を引き摺っていくのは、建設的ではないが、少なくとも責任者は職を辞し、事務局員には戒告でも課さなければ示しが付かないし、再発を防止することも難しいのではないかと考える。
事務局に大金を取り扱う人間はいても、誰一人として経理を理解する人間がいなかったこともそれまでの日本ペンクラブの組織が好い加減だったという印象を受ける。果たして良識ある会員は、こんな中途半端な処分(?)と報告で納得するだろうか。