2023年10月にイスラエル軍がパレスチナ・ガザ地区を空襲して以来、早くも1年半が経過したが、イスラエルはその後も攻撃の手を緩めることなく徹底的に攻撃し、多数の犠牲者を出している。その間他国のあっせんもあり、度々停戦合意があったが、直ぐに再戦する有様である。国際社会の非難を浴びながらもイスラエルは、ガザ地区に容赦のない仕打ちで民家と住民を破壊、殺戮しているが、それはガザ地区に本拠を置くイスラム原理主義「ハマス」が攻撃するからだと住民や難民の存在など意に介さない態度である。イスラエルは空軍力を持たないハマスに対して、圧倒的な軍事力優位を背景に一方的に攻撃している。特に、アメリカのイスラエルへの支援が大きく、この戦争を終戦へ向かわせない原因ともなっている。
ガザ地区では、すでに5万5千人を超える死者、1万1千人もの行方不明者、それに加えて約10万人がパレスチナから避難して、人口は210万人となり、ガザ地区では人口が6%も減った。
あまりに激しい攻撃に住民は食料も手に入らず、住民は1日にせいぜい1食がやっと食べられる食料不足と栄養失調状態に陥っているという。国連の人道支援団体が、食料を配布している最中にイスラエル空軍が空襲を行い、とても人道支援が出来ない。一方でアメリカ主導のガザ人道財団による食料の配給の現場に集まった住民が、イスラエル軍の発砲などで相次いで犠牲になっている。これにアメリカから何のコメントもない。現地で活動するユニセフは、財団による配給は危険なうえ、支援は行き渡っていないと批判し、イスラエルが制限している国連による支援物資の搬入を制限なく認めるよう求めている。惨禍が拡大するのは、アメリカとイスラエルが結託した無慈悲な行動のせいである。
現在パレスチナを国家として承認している国速は約150か国あるが、G7で承認している国はない。このような渦中に、フランスはパレスチナを国家として承認する動きを示した。イギリスも承認に傾きつつある。ナチスによるホロコーストの罪を負い目にして、これまでイスラエルに同情的な姿勢を示してきたドイツも、最近スタンスが変わりつつある。10日には、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェーの5か国が、イスラエルの極右閣僚に対して制裁を科すと公表した。これに対してイスラエルは報復すると声明、支援国アメリカもこの制裁を非難しており、イスラエルと批判する国々との溝が深まっている現状である。
この惨状に西欧諸国のスタンスが変貌しつつある。フランスのマクロン大統領は、「私たちはガザを見捨て、イスラエルに自由があると考えるなら、私たちは自らの信頼性を失ってしまう」と述べた。イギリスのスターマー首相は、「イスラエルの最近の行動はゾッとし、逆効果かつ容認できないものだ。制裁を含めて、同盟国とともにさらなる行動を検討し続ける」とイスラエルの最近の行動に呆れている。ドイツについては上記のようにホロコーストによる心の傷を受け、ユダヤ人に対して遠慮がちの受け入れ対応を取ってきた。それは実際にホロコーストの現場であるアウシュヴィッツ収容所を訪れてみれば分かることである。ドイツのメルツ首相は、「イスラエル軍が今していることは、何が目的なのか、もはや理解できない」とこれまでのドイツの対イスラエル外交の転換を匂わせる言葉を発している。イスラエルはもはや四面楚歌である。