来月3日に韓国大統領選挙が実施される。尹錫悦・前大統領が非常戒厳令により罷免され、与党「国民の力」からは現在2人が立候補している。しかし、最大野党「共に民主党」に圧倒され形勢は芳しくない。にも拘らず、与党の2人が候補者一本化に同意しない。現状は野党前代表の李在明氏が51%と圧倒的な支持を確保していた。ところが、最近になって世論調査によると李在明氏の支持率が下がり、今では45%に下降した。
一方与党「国民の力」からは、金文朱・前雇用労働相と李錫氏の2人が立ち、それぞれ36%、10%の支持を得ている。与野党候補者の支持率が大分縮小してきたことを考えると、残り日数が1週間ばかりとなり、野党候補者に勝つのはかなり厳しいが、今後この2人が話し合ってどちらかに一本化できれば、与党候補者が勝利を収める期待が消えたわけではない。従来通り与党「国民の力」に踏ん張ってもらいたいと願っている。
実は、今年国交正常化60周年を迎える日韓両国にとって、中国、北朝鮮など周辺国の圧力が高まっている日韓両国がお互いに手を携えて行かなければならない時である。しかし、李在明氏があまり親日的ではないだけに、現在後塵を拝している与党が候補者を一本化して選挙に臨んで欲しいと願っている。残り1週間で決着がつくが、何とか「国民の力」が、これまでと同じ力を発揮して欲しい。
韓国では、その大統領選でも首都ソウルの一極集中が、出生率の低下や、高い高齢化、後期高齢者の貧困率など、いくつも問題になって大統領選の論点にもなっている。例えば、ソウル市とその周辺の首都圏の人口が国全体の人口の半数を超え、世界でも突出した人口集中度である。それはかなり以前からじわじわ全国都市から首都ソウルへの転出、流入によるものである。それには韓国独特の特異性もある。ソウルでなければ、生活出来ないとでも言わんばかりの若者の首都進出が嵩じた結果である。韓国と日本とは傾向は似てはいるが、日本は韓国ほど極端ではない。韓国第2の都市である釜山ですら、今では人口が減少して第2の都市を仁川市に譲るのもそう遠い将来ではない。
首都ソウルに地方都市から人口が流入するのは、優秀な大学がソウルにあり、その卒業生が就職する大手企業もほとんどソウル市内にあるために、若者はソウルの大学を目指し、大手優良企業へ入社することを目指すようになった。当然ソウル市内の優秀な大学へ入学することは難しく、受験環境に恵まれたソウル市内に地方から移住して勉学に励むのが、今どきの韓国学生の普通のパターンになった。韓国の専門家も「序列が高いとされる大学や良質な雇用などが集まるソウルが、人々を吸い寄せるブラックホールのようになっている」とコメントしているほどである。
ソウル市内の賑わいや、若者たちの幸せそうに生活を楽しんでいる光景からだけでは中々分からない、隠された現実的な問題があるのだ。日本もこれほど極端ではないが、東京の首都圏にはこれと同じような現象が見られる。他人事ではないのかも知れない。