またトランプが仕出かした! 昨日の夕刊、今日の朝刊にも大きく取り上げられている。トランプ政権がハーバード大学の外国人留学生を受け入れる認可を停止したと発表したのである。本来学問の自由から大学の教育、自治などは公的機関、況してや国家が介入すべきことではない。
1月のトランプ政権発足後パレスチナ・ガザ地区を巡る学内でのイスラエルへの抗議デモ等を理由に、「反ユダヤ主義」、「行き過ぎたDEI(多様性・公平性・包摂性)」があると大学への圧力を強めて来た。3月にはハーバード大に対して「反ユダヤ主義的な差別」への取り組みが不十分だとして、約1.3兆円に上がる助成金の見直し方針を表明した。大学側は学問の自由を脅かすものだとして政府の圧力に抵抗したため、助成金が凍結されることになった。更に大学側に対して非課税資格を取り消させるという脅しまでかけてきた。この助成金停止に対して大学は政権を提訴して現在係争中である。ただ、どうしても政権に弱い立場の大学に対して研究予算の削減などを進めており、それは世界中から優秀な人材を集めて高度な研究を進めている大学が力を失うことであり、そのことは取りも直さずアメリカの競争力の低下を招きかねない。
現在ハーバード大には、留学生は全学生の約27%、6,800人も在学し、大学にとってはその学費(1人年間約860万円)は重要な財源となっている。留学生や研究者の出身国も140か国を超え、日本人留学生も2~300人が在籍している。政権の留学生認可停止に関しては、在籍中の留学生もその対象とされ、「転校か、法的資格の喪失」を選択しなければならないという厳しいものである。留学生の中には、現在一時的にアメリカ国外へ出国している学生もいて、彼らが再入国できるのか見通しが立たず、新学期が始まる9月に大学に戻れるのかについて不安が広がっているという。
トランプ政権としてはエリート大学の中核であるハーバード大にプレッシャーをかけて、他の大学にも政権の考えに沿わせようとの腹づもりがあると思う。元々大学の反ユダヤ主義デモがお気に召さなかったようだが、平素から裕福なユダヤ人から資金的に恩恵を受けているトランプ氏にとって、ユダヤ人の国イスラエルを批判する反ユダヤ主義が許せないことと、イスラエル政府を支援しているトランプ政権に味噌をつけたことが許せないことであると思う。結局は自らの私利私欲のためにエリート大学を痛めつけているという印象が強い。
この先大学の自治や自由などこじれた問題がどういう結果になるのか不透明であるが、1ハーバード大への圧力が、プレッシャーに屈したコロンビア大のように他大を委縮させている事例も見られる。それにしてもトランプ政権は、気に入らなければ憲法、法律などにお構いなく何でもやるの姿勢である。アメリカの学問の自由、民主、公平性などが次々に破壊されたら、アメリカは最早建国時の精神は失われたと諦めるより仕方がない。実に残念なことである。
このトランプ政権のハーバード大への留学生受け入れ停止の措置について大学が政府を提訴していたが、今日夕方のネットによると幸いにもマサチューセッツ州連邦地裁はこの措置を一時的に差し止める仮処分を出した。今後双方の対立は激化する恐れもあるが、取り敢えずホッとしている。