今のアメリカを見ても分かるように保守・右翼化思想及び現象が世界的に広がりつつある。昨日ドイツの連邦議会で首相選出のための議会投票が行われた。些か意外だったのは、当然選出されるだろうと予想していた中道右派「キリスト教民主・社会同盟」党首のフリードリヒ・メルツ氏が、過半数に届かず首相に選出されなかったことである。こんなことはドイツ議会にとって初めてのことである。そして、5時間半の中断の後に実施された2度目の投票でメルツ氏は何とか過半数を獲得し、首相に選出されることになった。メルツ氏が所属する「キリスト教民主・社会同盟」だけでは、過半数に達せず、極右政党「ドイツのための選択肢」とタイアップして選挙に臨んだ。しかし、両党内に不満分子がいて過半数に6票だけ不足した。2度目の投票で何とか1回目で棄権票を行使した議員が賛成票に転じ、一応新政権が発足することになった。メルツ氏もやゝ求心力が低下して今後の政権運営は、中々厳しいものになることだろう。特に、難しいのは、移民・難民政策である。フランスやイギリスなどに比べて、これまで穏やかな移民政策を取り移民を受け入れて来たドイツでは、近年移民問題が大きなネックとなっている。メルケル元首相、シュルツ前首相はともに移民の受け入れに前向きだった。今ドイツのデモ風景などを観ていると、右翼というより最早ナチ化の空気が感じられるほど右翼傾向が見える。ヒットラーのネオ・ナチが復活しなければ好いがと願う。
今ヨーロッパでも右翼化の勢いが強く、フランスのマクロン大統領もかなり警戒している。トランプ大統領に引っ張られるように保守的ムードが蔓延るのだけは、勘弁してもらいたいものである。
さて、政治とは全く別の事象であるが、今世界中、特にカトリック教徒の間で強い関心を呼んでいる問題がある。世界で14億人もの信者がいるカトリック教徒の頂点に立つローマ・カトリック教会の教皇を選ぶ、「コンクラーベ」である。今日からミケランジェロのフレスコ画「最後の審判」で知られるバチカンのシスティーナ礼拝堂で始まる。何度も訪れて見惚れていた素晴らしい礼拝堂内部である。何とも舞台仕掛けは、歴史的にも文化的にも最高の場で行われる。どうも政治の世界とは異なり、一部の人びとが秘密裏に最高権威者を選ぼうとする、他に例がない選挙であり、報道陣はもとより外部の人との接触も一切拒絶して密室で行われる。教皇に次ぐ聖職者である枢機卿の内、80歳未満の枢機卿による互選で決まる。この「コンクラーベ」と言う言葉が、日本語の「根競べ」を想像させて日本人にとっては、まさに「根競べ」のように競って教皇を選出するシステムが興味深い。原語は「鍵をかけて」と言うラテン語に由来するという。13世紀には権力闘争も絡み、教皇が3年間も決まらなかった時に、枢機卿らを会議場に鍵をかけて閉じ込め、早く決めるよう促したことから生まれた言葉である。選挙とはいえカトリックのトップである教皇を選出する儀式のようなものである。
今回の「コンクラーベ」では、133人の枢機卿が投票する予定であるが、教皇に選出されるためには、2/3以上の89票が必要とされ、早くても3日はかかるようだ。教皇が決まり選出されると礼拝堂の煙突から白い煙が出ると同時に、サンピエトロ大聖堂の鐘も鳴ることになっている。
かのトランプ大統領も教皇になりたいのか、教皇の衣装を纏った自らの肖像画をSNSに投じたが、こればかりは世界中から非難の声が上がり物議を醸している。果たしていつ、どんな枢機卿が新教皇に選ばれるのだろうか。