アルジェリアの日本人人質事件の情報が錯綜してどうも分り難い。メディアが伝える情報も時々刻々変化して、情報源によってその内容はマチマチである。ロイター、AFP、アルジャジーラ、アルジェリア通信、さらにモーリタニアの報道機関からそれぞれやや信頼性に乏しいニュースが次々伝えられるが、どれを信じて良いのか見当がつかない。それぞれ情報源が政府側と、政府と対立する武装集団側から発せられることもあって、生死の情報が逆転することもある。世界的大ニュースでこれだけ報道内容が混乱するのも珍しいのではないだろうか。その混乱の原因にはアルジェリア政府がまったく公式発表をしないことがある。そんな折国営アルジェリア通信が、政府軍による鎮圧作戦は日本時間今朝未明に終わったと一方的に伝えた。アルジェリアは事件勃発後2日も経たないうちに、政府軍が行動を起こし、多数の犠牲者を出してしまっていたのである。
日本人の安否情報も、日揮㈱から得られる情報を幾分当てにしているようで、アルジェにある日本大使館からは何の情報もない。アルジェのイギリス大使が日本人の消息を僅かに伝える程度である。
そんな中で今日午後5時、TBS報道番組「Nスタ」で知り合いの軍事評論家・小川和久氏が、「日本はアルジェリア政府に対して軍事行動を止めろと言っている。しかし、イギリスやフランスのように特殊部隊のように止められる力があるならそう主張しても良いが、日本の場合はそういう組織や部隊がなく説得力に欠けるので、あくまで人命優先ということを強く主張すべきだ」と言われたことが、強く印象に残った。
アルジェリアはなぜそれほど行動を急いだのかとの疑問の声が強い。その突撃の詳細は今もって分らない。関連施設には17人の日本人がいたが、午後9時現在やっと7人の生存が確認された状態であり、なお10名の安否が不明である。2人の日本人犠牲者が出たとの報道もある。これまでのテロ事件では極めて異例である。アルジェリア通信の終戦発表にも拘わらず、まだ現地では散発的な銃撃戦が続いているともいう。
アルジェリアが独自に解決を急いだ背景には、遡れば130年間に亘る宗主国・フランスからの独立戦争、その後の政変とイスラム系組織に対する不信があるようだ。2度と他国の支配を受けたくないとの強い願いが他国からの干渉を排除しようとの気持ちが働いたようだ。
そう言えば、1967年戦時中のベトナムから帰った後、アルジェリア独立戦争を取り扱った映画「アルジェの戦い」を観て随分惹き込まれた。スカルノ大統領末期のインドネシアを訪れた直後でもあり、同じように独立を勝ち取ったアルジェリアのベンベラ将軍(後に首相、大統領)の勇姿に感動したものである。それが、外国からの干渉を受けないアルジェリアの今日の姿となった。今や産油国として力を伸ばしてきたアルジェリアだが、国内には政府の嫌うイスラム系テロリストが潜伏して政治的には安定していない。今回の事件でも関係国は、日本だけに留まらず、イギリス、アメリカ、フランス、ノルウェイ、フィリピン、アイルランド、南アほか多くの国が含まれる。この事件の行方と結末はどうなるのだろうか。一刻も早く犠牲が少なく解決して欲しいものである。