日本原子力発電敦賀原発について原子力規制委員会は、昨日同原発2号機の直下を走る断層について活断層である可能性が高いとする報告書案を了承した。これが最終決定ではないが、敦賀原発の再稼動は極めて難しくなった。
昨日召集された通常国会で安倍首相は所信表明演説を行った。評論家諸氏がコメントしているように、経済再生を力説し、その半面微妙な問題について語ることを避けた無難な内容だった。それらは大きく分けて経済、震災復興、外交・安全保障、教育の4つの分野に集約される。首相は党内で合意を得ていないTPPと原発問題に関しては触れることを回避した。
今わが国にとって原発問題は喫緊の課題である。その重要課題を取り上げることなくして危機突破内閣としては責任逃れと言われても抗弁できまい。下手をして火ダルマになることから逃げようとしたのだろうか。
先日も原発容認派の友人と議論になったが、今もって原発の根本的な問題は解決されていない。放射能を撒き散らす恐れの極めて高い、こんな危険なエネルギー源をどうして断念するという発想が生まれないのか不思議ですらある。しかも、排出される「核のゴミ」とされる使用済み核燃料の処分方法がまったく解決されず、依然として世界中で「核のゴミ」問題が宙ぶらりんの状態なのである。
震災前の2011年2月NHK・BS放送でBSドキュメントのシリーズ「放射性核廃棄物はどこへ」の一環として、「地下深く永遠に-核廃棄物」が放映された。これは2010年に国際環境映画祭でグランプリを受賞した秀作である。ほんの1時間足らずの短編であるが、エネルギーを必要とするわれわれ現代人に多くの問題を示唆し考えさせ、同時に核を使用することの是非を問いかけているものだ。
この作品が一昨年7月に再放送された時私は初めて鑑賞し、昨日改めてビデオを観てみた。フィンランドのオルキルオト島の地下400mにある「オンカロ」と称せられる洞窟内に、高レベル使用済み燃料を埋み込める計画を映像化したものである。これは「10万年後の安全」としてドキュメンタリー映画でも映像化された。これも同じ頃渋谷の映画館で観た。
その最終処分計画の建設許可が実際に申請され、順調に行けば来年6月に建設を始め、2020年に操業を開始するという記事が、今月24日の朝日朝刊に紹介された。これは排出された核のゴミを処理するための世界で初めての施設である。一応10万年間は持ちこたえられるという前提の下に作られたものである。現在世界中に排出された使用済み核燃料は、少なくとも25万トンと言われている。このオンカロで処分されるのは9千トンである。まだまだ処分問題は緒についたばかりで、解決したわけではない。今後核のゴミの処理について、国際的にどういう対応をして解決していくのか、今も長期的な展望は見られない。
問題のひとつである、出口の問題は現状ではオンカロのような処分方法がやっと実用化されようと考えられたが、その一方で入り口の原発稼動問題と切り離すことができない放射能漏れの危険については、解決策は原発を稼動させないことであることは分っていながら、これが廃絶に向けて一向に前進しない。
偶々昨日の海外ニュースで知ったことであるが、ブルガリアの原発計画が福島原発事故以降ストップしている。ブルガリア政府はこれを機会に原発計画中止を提案したが、賛成派議員が猛反対して大きな問題となった。その結果国民投票を行ったところ、賛成派が60%を占めたが、投票率が21%台と低くこの国民投票は無効となったそうだ。いずこの国でも原発計画については悩み、できることなら別のエネルギー開発を行いたいとしながら、原発中止にまでは踏み切れない。
日本ではどうするのか。原発が「トイレのないマンション」と揶揄されるように、核のゴミは溜まる一方である。私個人としては絶えず放射能漏れの心配をしなければならない危険な原発は、次世代のためにも断固中止しなければならないと考えている。どちらにせよ、政府もできるだけ早く展望と国の方針を打ち出すべきであろう。