このところ教育現場の体罰問題が綻びるように後から後から明かされてくる。大きく報道された、一昨年の大津市の中学生いじめ自殺事件に関しては、今日第三者委員会から最終調査報告書が大津市長に提出された。報告書では、いじめが直接的な要因だったとはっきり断定した。更に学校と教育委員会の責任も問うた。回収された生徒へのアンケート調査用紙でも学校内で自死した生徒に対するいじめ行為があったことは明らかで、多くの同級生が目撃し、担任教師にもその様子が伝えられた。にも拘わらず学校側はそのままいじめ行為を放置していた。生徒の父親が学校に見殺しにされたと嘆くのも無理はない。
昨年は顧問教師による体罰を苦にした大阪市立桜宮高校バスケットボール部主将の生々しい自殺事件、とその後の高校入試中止に伴う一連の非教育的行為が世間の注目を浴びた。
体罰事件はその後駅伝の豊川工高、レスリングの網野高、水球の津田学園高らスポーツ強豪高校の運動部から、公立中学校の部活に至るまでこのまま放っておくと不祥事の表面化は野火の如く広がりそうだ。
そこへ昨日、こともあろうに全日本女子柔道チームの監督、及びコーチがオリンピック・メダリストを含む15人の代表女子選手から暴力、暴言行為を行ったとして告発されたのである。女子チームの園田隆二監督は世界選手権の優勝経験もあり、ロンドン・オリンピックの監督も務め、実績は充分である。暴力行為は許されるものではないと認識しているようだが、監督自身の発言を聞いているとオリンピック金メダル至上主義のプレッシャーがあったと責任逃れのような考えが窺え、心から反省しているようには見受けられない。これを受けた全日本柔道連盟のお粗末な対応には、まったく統治者意識が欠如している。これだけの問題を引き起こしていながら、あまりにも安易に監督続投を決めている。こんな暴力監督の下では、恐怖感が先立って選手もやる気が起こらないのではないか。更に女子選手から手紙を受け取り、訪問まで受けて事情を説明された日本オリンピック委員会(JOC)の対応も、問題の解決を全柔連に委ねる無責任ぶりで腰が引けている。今日の新聞を読むとメディアは挙って園田監督と全柔連に対して厳しい対応を迫っている。
今日午後開かれた園田監督の記者会見で園田氏は代表監督辞任を匂わせたが、全柔連は相変わらず煮え切らない。これでは柔道界全体が暴力を容認しているように誤解されるのではないだろうか。
流石に下村博文・文科相は竹田恒和・JOC委員長を呼び出し、柔道界の暴力問題について苦言を呈した。ザッケローニ・サッカー日本代表監督がイタリアではスポーツ・チーム内の暴力は考えられないと、普段エキサイトし勝ちなラテン人種らしからぬコメントを述べていた。
あのラテン国ブラジルでは、監督が暴力を振るえば逆に監督が選手から暴力でやり返されるということも言われている。日本では相も変わらず一方的に上から下へ暴力を押し付けるのだろうか。国際柔道連盟もこのまま看過できないとして、次回の理事会でこの暴力問題を取り上げる方針だという。えらいことになってきた。
はてさて、このままでは納まるまい。監督は辞任し、連盟は新しい体制となって出直すしかないのではないかと思う。