先日来東京電力が国会事故調査委員会に、福島第一原発1号機の現地調査に際して虚偽の説明をしていたとして大きな問題になっているが、この問題を釈明した東電はその中でもまたもや嘘をついていたことが分った。二重に世間を騙していたのだ。
これはどういうことを意味するのだろうか。東電は最初から調査団の立ち入りを認めたくなかった。そのために、暗いから危ないとして肝心の場所へ調査団を案内しようとしなかった。暗いということが理由ではなく、その内部の荒れた状況を見せたくなかったのである。それが朝日新聞で突かれると、謝って釈明した。ところが、その釈明がやらせだったのである。流石に調査団はもちろん、茂木敏充・経済産業大臣も「何らかの意図を持って虚偽の説明をしたとすれば、断じて許されない」と怒り心頭である。
この問題で、年休明けの明後12日衆議院予算委員会に広瀬直己・東電社長が参考人招致される予定である。
東電が隠したい気持ちは何となく分らないでもないが、そんなことをすれば原発事故の原因究明ができなくなるばかりか、隠蔽体質がそのまま踏襲されるだけで、いつまたもっと大きな事故を呼ぶことになるか判ったものではない。そんな大それたことを会社ぐるみでやっていたとすれば、東電は最早事業を経営する資格はない。
参考人招致で、広瀬社長は現地調査断念をねらって嘘の説明をしたと認めるのか。また、国会の調査権をないがしろにした責任をどう取るのかが注目されている。
個人的に私もこの虚言事件に少なからずショックを受けた。というのは、実は昨年3月に国会事故調査報告書が発表され、それが市販された時、すぐ買い求めた。その直後に出版ニュース社の清田義昭社長にお会いしてこの問題を話し合った時、清田社長からこの報告書を読んで書評を書いてほしいと頼まれたのである。私はこの原発事故、並びに原発問題に強い関心を抱いているが、あくまで専門家でなく原子力専門知識もなく、とても論評できるような文章は書けないとお断りした経緯がある。仮に知識もないままにあの時安請け合いしていたら、私の書評も場違いなものになっていた可能性がある。
今この時間(21:00)にNHKスペシャルは、ちょうど「『核のゴミ』はどこへ」を放映している。使用済み核燃料、つまり核のゴミの処分に頭を痛めている各界・各地の様子を生々しく伝えている。民主党政権が一旦は30年後の脱原発戦略を打ち出したが、安倍政権はそれをゼロベースで見直すと原発容認の方針を明言した。
今国民にとって一番困るのは、情報をはっきり示さず、秘密でことを進めようとしたり、ウソで固めた資料の下にすべてが進められることがあまりにも多すぎることである。
ともかく12日に参考人招致される東電社長の発言を注目したい。