一昨日の本ブログに、日本銀行次期総裁候補として元財務官で現在アジア開発銀行総裁の黒田東彦氏が噂として流れていると書いたが、何のことはない。今日の朝日、日経両朝刊の一面に次期総裁として有力と明確に書かれている。よく読んでみるとどうも黒田氏で決まりのようだ。テレビでは起用とまで報道されている。金融緩和論者の黒田氏起用のニュースが伝えられるや株式市場はこれを好感し、日経平均株価は4年5ヶ月ぶりに1万1600円台にまで上がった。
では、2016年まで任期の残っているアジア開発銀行総裁の職はどうするのかと思っていたら、アジア開発銀行総裁職は日本の指定席ということから、早速後釜に現財務官・中尾武彦氏を決め、総裁として強引に押し込むつもりのようだ。黒田氏の場合は、2005年から長きに亘って総裁を務めており、これを安易に交代させて、後任に別の日本人を押し込むとは、日本政府も少々不遜に過ぎるのではないかと思う。正式決定ではないので、何とも言えないが、このようにアジアの人たちを侮辱するようなやり方はとても賢明とは思えない。
ところで今度の訪米で、安倍首相がオバマ大統領と多くの点で合意したかのような印象を与えているが、その中の最重要課題であるTPP加盟問題は中々一筋縄では行きそうもない。これまで経団連などはこれに参加しなければ、日本の経済成長が止まるかのようなニュアンスで語っていたが、直近の報道などを見ると、日本の積極的な加盟を促していたアメリカが国内自動車業界の関税撤廃反対の声に押されて、自動車の輸入に関税を課し続けると言い出しているという。それでは、日本としても農業分野の貿易自由化はとても受け入れがたいところだろう。工業製品と農業品だけでも、このように意見がまとまっていない。これでは他の加盟国にとっては何のための貿易協定だか意味不明で、話が一層複雑になるだけである。
現在TPP加盟国は、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム、ペルーである。これらの国々は自由貿易国に近い国であるか、一次産品輸出国であり、日米がTPPで関税撤廃を行った場合、アメリカは車で日本の進出を許し、日本は米豪、その他の行製品産出国から農業分野で大きな打撃を受ける。この点を考えると日米にとって他の加盟国に比べて、TPP加盟はそれほどメリットはなく、お互いに得策ではないのではないかという気がしている。
分り難いが、どうもその辺りの日米間の駆け引きに裏の裏があるのではないかと勘ぐりたくなる。安倍首相が日米同盟の強化が確認されたと得意満面で話しているのに対して、オバマ大統領は野田前首相の時と強い絆は変わらないという言い方である。日本へのシェールガス輸出についても協力を要請した安倍首相に対して、オバマ大統領は明確に答えず、日本の立場に理解を示したというものである。
かつて当時の李明博・韓国大統領が訪米した時は、晩餐会を催してくれたが、安倍首相には午餐会で済まし共同記者会見も開かれなかったと穿った見方もある。オバマ大統領には、アメリカ人記者から肝心の首脳会談の中身よりアメリカ経済の中身に関する質問が多かったとも聞く。モテモテだったとか、日米同盟の強化を確認したとか安倍首相がはしゃいでいる割りには、アメリカにおける安倍首相への饗応は冷めていて期待したほどではなかったということのようだ。それは、いつも日本に辛口の中国の論評が安倍首相はアメリカに冷遇されたということでも分る。
結局いつまでも情緒的な理解とか、実行の伴わない口約束だけの話し合いでは、相手に愛想尽かしをされるということが何となく分った、先の日米首脳会談だった。もちろんお坊ちゃま首相にも分ったのではないかと思う。
今日お隣の韓国では、李明博氏が大統領の座を去り、女性として初めての朴槿恵氏が就任した。暗殺された日本陸軍士官学校出身で、親日的だった朴正煕・大統領の娘であるが、韓国世論を受けて必ずしも彼らの対日感情が好転するということでもないようだ。近い将来に竹島問題でわだかまりのある日韓両国の間に新風を吹き込み、対日感情を好転させてくれるだろうか。期待したいものである。