77年前の今日払暁、「昭和維新」を掲げた陸軍青年将校によるクーデターが勃発した。それから僅か4日間で事件は鎮圧された。いわゆる「2.26事件」である。日本中を沸かせた前代未聞のクーデターは、昭和史上最もショッキングな事件だった。岡田啓介首相、高橋是清蔵相、斉藤実内相、渡辺錠太郎・陸軍教育総監ら国のトップ9人を殺害し、首都圏を恐怖のどん底に陥れた。事件の結果は、中心となった若手将校25名のうち、17名が死刑となったおぞましい事件だった。学校教育の場でも学んだ事件であるが、残念ながら時代とともに次第に事件は風化が進み、近年はメディアでもほとんど取り上げられることがなくなった。
事件当時は国内でも世界的な経済恐慌の影響を受け失業者が街に溢れ、東北地方の大凶作により農民の間には世を儚んだ人も多く、政治への不満が高まっていた。しかも、庶民の苦しみをよそに政界は政権抗争に明け暮れ、政党政治は崩壊し、若手軍人の間には軍上層部への不満も募らせていた。事件の背景には、現状に不満を抱き、陸軍上層部に操られた一部将校が過激な行動に走ったとも言われている。
現在安倍政権が少しずつ右傾化の方向へ歩み出していると言われ、同時に憲法改正や自衛隊の在り方について慎重に議論されることが多くなってきた。当時とは時代背景がまったく異なるとは言え、この流れが加速すると、現代にあっても不満を抱く「青年将校」的行動が暴発しないとも言い切れない。その点を思い、かねがね他山の石として「2.26事件」を学び反省してみることが必要ではないかと考えていた。
しかしながら、今年も新聞、テレビらジャーナリズムはそれらしき気の利いた企画や報道を行っているありようが見えずがっかりしていた。それが、1週間ほど前にNHK・BSでBS歴史館「徹底検証2.26事件-日本をどう変えたか?」という番組が放映された。父の渡辺錠太郎・陸軍教育総監を9歳のときに目の前で銃殺されたノートルダム清心女子大学名誉学長・渡辺和子氏が、赤裸々に現場の状況を語っていた。渡辺氏が教育総監の次女だったことは寡聞にして知らなかった。
また、今夜のNHK「ニュースウォッチ9」でその時やはり襲われたが、一命を取り止めた鈴木貫太郎・侍従官(終戦時の首相)のたか夫人がその場面を語った録音テープについて報道していた。テープでは、首謀者のひとり、安藤輝三大尉の行動と人柄について鈴木夫妻が褒め称えていたが、私にも頷けるものがあった。
実は、個人的に30代のころ松本清張著「昭和史発掘」のシリーズ物を読んで、安藤輝三大尉の人物像と人柄に心を動かされていたのである。それにしても彼のような真摯で、しっかりした目標を持った、人間性を失わない人物が少なくなったと思う。
日本のあるべき姿、これから進むべき道を考えてみるためにも、日本の歴史上画期的事件だった「2.26事件」を忘れてはならないと思う。あの日は朝から大雪だったが、今日は外出しても汗を掻くほどの温かさだった。
さて、成すべきことのひとつを今日終えた。毎年苦行のひとつである確定申告書を今日玉川税務署に提出することができた。とりあえず、ほっとしている。昨年までは2月中に提出したことはなかった。例年通り変わらぬ手書き記入ではあったが、準備が早かったことが良かったと思っている。
夕方になってまた日本人観光客が犠牲になったニュースが飛び込んで来た。エジプトのルクソールで熱気球が墜落し、乗っていた日本人4人を含む19人の観光客が亡くなった。明日シニア大楽で自治体の生涯学習担当者を対象にPR講義を行うが、私は世界遺産について話をする。ルクソールのカルナック神殿とアブ・シンベル神殿についても触れるつもりである。
それにしても先日グアムで日本人3人が殺害されたのに続く悲劇である。世界の観光地も安心できなくなってきたようだ。