安倍首相は今日衆議院本会議場で施政方針演説を行った。TPPは現時点では政治の最大関心事のひとつであり、触れるのは当然であるが、アメリカ政府との間で完全に調整がついていないのか、言葉では威勢がいいが、言っていることに進展がないような気がする。その他に重要課題として①原発再稼動、②普天間基地移設、③議員定数削減、④憲法問題、等を挙げた。その中で①について「安全が確認された原発は再稼動する」と述べた。敢えて言うなら、「原発の安全が確認されることはない」と言ってあげたい。
今日の朝日朝刊トップ記事は「原発作業員の被曝記録―東電、2万人分未提出」とある。まもなく震災から2年になるが、根本的には福島第一原発の放射能漏れは終息していない。関係者は皆何とか影響は少ないとか、作業は順調だとか、できるだけ事実を小さく伝えようとしている。だが、懸命の作業にも拘わらず、事態はゴールに中々届かない。先日もやらせの報告書や、汚染物質を不法に廃棄処分したことが暴露された。現場ではウソの報告や、事実の隠蔽が後から後から公になる。事実を矮小化しようとの企みに拍車がかかるばかりである。しかも、率直に言って国民の間では、再稼動賛成派より、反対派の方が上回っているのは紛れもない。こういう現実の中で、どうやって安全を確認し再稼動を進めるのか国民にはっきり真実を語って欲しいものである。
②については、沖縄県民はほとんど反対しているが、それを移設の期日を決めるだけでなく、基本的なロードマップを決めて沖縄と政府がもっと突っ込んだ話し合いをしなければ、話は一歩も進まないと思う。実際防衛大臣始め政治家は沖縄へ出かけて、当事者と向き合って話し合い、泥をかぶってでも事態を解決しようとの意気込みが感じられない。
③も本当にできるのかどうも信用できない。毎度本件に関しては、議員自ら火の粉をかぶる可能性があり本論賛成、各論反対になりがちだからである。
④はいよいよ憲法改正について動こうとしている姿勢を示したと言える。これから質疑の中で問題点が炙り出されるだろうが、意気消沈の野党第1党の民主党がこれを機に活性化させてくれるだろうか。あまり期待は持てそうにないが・・・。
さて、昨日アメリカのピアニスト、バン・クライバーン氏が骨肉種のため亡くなった。78歳である。私自身音楽にはあまり詳しくないが、それでもこのクライバーン氏が、私が浪人中の1958年にチャイコフスキー国際コンクールで優勝した時のアメリカ人の喜びようが尋常ではなかったことが強く印象に残っている。東西冷戦の最中に彼が帰国した際は、当時のアイゼンハウワー大統領が出迎えたほどである。早速彼がコンクールで演奏したチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」のレコードを買い、メロディーを覚え、以来大好きな曲となった。4年前彼の名を冠したバン・クライバーン国際ピアノコンクールに、辻井伸行さんが日本人として初めて優勝して、久しぶりにクライバーン氏の姿を見て懐かしく思ったものだ。
また、ひとり英雄が去り、寂しくなった。