2119.2013年3月2日(土) 理念も信念もあったものじゃない。

 昨年の衆議院総選挙で圧倒的な勝利を収めて政権奪還を果たしたせいか、最近の安倍首相の言動にはうっすら自信らしきものさえ見受けられる。同時に自民党の政策行動にも自信たっぷり、些か不遜な空気さえ感じられるようになった。これが思い上がりでなければ良い。

 今朝の新聞では2つの気がかりなトピックスに目を奪われた。そのひとつは、昨夕菅義偉・官房長官が談話の中で武器輸出三原則骨抜き発言をしたことである。これまで「国際紛争の助長を回避する」との名目で、歴代内閣が基本理念としてきた三原則がいとも容易く破られたのである。理念も何もあったものではない。こういう自民党の行動を国民無視、傲慢と言わずして何と言うべきか。具体的には、国内で製造した最新鋭ステルス戦闘機F35の部品輸出を例外的に認めようというものである。明らかに今回の輸出部品に関わった三菱重工、IHI、三菱電機のような日本の軍需産業に寄与するものである。しかも、この部品の輸出はアメリカ政府が一元管理する国際生産システムに組み込まれる。すべてはアメリカの管理に委ねられ、日本の部品であろうとどこの国へ何の目的で再輸出されるのかは、日本政府には知らされず与り知らないことになる。だが、一旦例外を認め出したらきりがない。今後この三原則は形骸化が加速することになるだろう。

 2点目の気がかりは、経産省が発表したエネルギー基本計画をまとめる有識者会議委員15人の中に脱原発派委員は僅か2人しかいないことである。民主党政権では25人中8人が脱原発派だった。これでは、結論は決まりきっている。委員会は安倍首相が施政方針演説で述べた「安全が確認された原発は再稼動する」ことを後押しすることは明らかである。最初に結論ありきであり、どうしてこうまでして露骨に原発を再稼動させようとするのか理解に苦しむ。原発にアレルギー反応を示す国民の声をしっかり聞いて、その世論を受け入れて検討するならまだしも、反対の声をないがしろにして、さらに未だに解決の方法すら見つからない「使用済み核燃料の処理」をそのままにして、なぜ結論を自分たちの願う方向へ導いていこうとするのか。

 再稼推進派委員の中に寺島実郎氏が名を連ねているのにはがっかりした。しかも、その原発賛成の理由が釈然としない。「日米の核と原発は表裏一体だ」というものである。寺島氏は原発是非について本質的にはまったく触れていない。これでは原発問題ではなく、むしろ日米連携問題ではないだろうか。論理的な思考と解説で知られる国際人寺島氏だけに、この短い説明だけではどうにも納得できない。

 4年前に所属する「知的生産の技術研究会」編集の「知の現場」(東洋経済新報社発行)の中で、私自身共著者のひとりとして、4人の論客にインタビューをしてその発言について執筆したが、その他に寺島氏との対談では傍に立ち会い、いくつか質問もさせてもらった。いつも理路整然と論理をしっかり構築して判りやすく述べる寺島氏の弁舌にはいつも敬服していたものだが、この原発容認派としての短いコメントは、主義は主義として結構だが、いかに親米派とは言え、日本はアメリカと常に同一行動を取るべきだ、言い換えれば、日本は何事もアメリカ追従主義で行くべきだと言わんばかりの論調は到底容認し難い。

 それにしても、安倍政権になって日本の道筋が、「右寄り」「親米」へ大きく一歩踏み出したとの印象を受けるが、今後日本の行方に暗雲を投げかけることがなければ良いのだが・・・と不安が先立つ。

2013年3月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com