昨日安倍首相は総選挙前から参加するか不参加か注目されていた、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉にわが国が参加することを表明した。農産品への配慮をしながら、交渉参加はわが国の経済全体にとってプラスになる最後のチャンスであると語った。これが日本にとってプラスになるかマイナスになるか中々見定め難いところだが、自民党内でもすったもんだの論争や対立があって国内的にはもちろん、しばらく党内外に波紋を呼ぶことであろう。
TPPへ参加の意思表示をしたことは経済界から歓迎されている反面、参加することによって外国から安い農業産品が輸入されることになり日本の農業が大きな打撃を受けるとして全農(全国農業協同組合連合会)は断固反対している。米の輸入についてはこれまで778%の高い関税を課して外国生産米の国内流入を防いできたが、これがダメになると農家は最早米作りをやっていられなくなるというのが全農の言い分である。
ところが、こんな一面もある。日本政府に対してTPPへの参加を誘っているアメリカでは、国内自動車業界が日本の参加に対して強く拒絶反応を示しているのだ。今日本の乗用車の輸入に課している2.5%やトラック25%の関税が撤廃されたら、進みつつある円安とも合わせてアメリカ自動車市場は日本車に占有されるとの危機感がある。
しかし、仮に日本にとって車のアメリカ市場への輸出がこのまま規制されるとしたら、当然日本としても農業製品の輸入に高い関税をかけ続けるであろう。それでは原則関税撤廃のTPP自体の存在の意味が失われることになる。
すでにTPP加盟国の間では条件が固まっている。あまりにも結論を出すのが遅すぎたのだ。それに後から交渉力の弱い日本が分け入って自分たちの都合だけを主張して認めさせることができるのだろうか。
条件内容が知らされず、中々分り難く経済界が盛り上がってはいるが、はっきり言ってそのメリットがあまりよく分からない。今朝の新聞には予想されたように関税を撤廃したら農業に大きな打撃となると書かれている。この空気を反映するように農業団体が大々的に反対集会を開き、夏の参院選には自民党に投票しないことまで訴えた。どうも穏やかではない。国内で賛成派と反対派の間で経済戦争が起きなければ良いがなぁと思う。
ところで、今日東京で桜の開花宣言が行われた。1953年に統計を取って以来2002年と並んで最も早い開花だそうだ。今年の冬は寒い日が多かったが、漸く桜の季節が近づいたということである。