中国には、実質的には3つの政治制度が並存している。中国本土と香港、そして台湾である。この内、香港と台湾ではトップの職を直接選挙制度により国民が選んでいる。ところが、本家本元の中国大陸では国民による選挙が実施されず、中国共産党内部の幹部らの合議によってトップである、共産党総書記、国家主席などが決定される。国民の与り知らないところで、「談合」により決定される非民主的な選出方法が一貫して行われている。これではとても民主国家とは言えない。一方で、香港と台湾に認められている制度では、トップは国民の直接選挙によって選ばれ、民意が反映された形態となっている。このように現状は1国3制度のいびつな政治状態となっている。
これについて最近になって中国政府は、2017年に実施予定の香港政府トップの行政長官選挙では、中国政府の意向にそぐわない民主派の対立候補の立候補を認めないことを表明した。民主的なやり方で選ばれた民意を反映した行政長官ではコントロールが難しいと判断したのだろう。実際現今の中国の統治機構では、北京政府がコントロールし難いようでは困るのだ。況してや民主的な思想を持った進歩的な人物が、その土地のトップに就任されたのでは余計困る。民主的な制度より自分たちが主導し易い統治の方が望ましい。トップダウン方式による行政制度が実行されてこそ、広い国内を思うように統治できると考えているのである。
そもそもイギリスから中国へ返還された時点で、香港は社会主義体制の中国の主権下で高度な自治や司法の独立、言論、出版、集会の自由など、独自性を要求した。香港は共産主義体制下の中国とは当初から相容れなかった。このため香港は中英共同声明の中でイギリス領から中国領となっても50年間は、香港の独自性を認めさせることで1国2制度を受容することにしたのである。にも拘らず、この1国2制度を骨抜きにして北京政府の思惑通りのやり方、つまり民主派ではない人物を選挙ではなく、任命制によって自分たちが裁量権を振るえる行政長官を選任しようとしている。協定違反も甚だしい。
この動きに対して、もう一つの独自の行政を行っている台湾も内心穏やかではない。早くも水面下で動き出したようだ。台湾の総統も直接選挙で選出されている。台湾には、選挙を採り入れようとしない中国のやり方に対する拒否反応が強い。台湾としてはこの民主化路線を捨てるようなことは断じて望まないだろう。問題をややこしくしているのは、中国が我利我欲で選挙を行わない非民主的な支配を続けようとしているからに他ならない。毎度のことながら、中国の「わが道を往く」強引さには困ったものだと思う。
「待ってました 五代目!」 今日新装なった5代目の歌舞伎座が開場した。3年ぶりのリニューアル・オープンである。新しい設備も話題を呼んで前景気は上々のようであるが、これから新しい歌舞伎をどのように発展させていくのか真価を問われる。これまで歌舞伎を支え、盛り上げてきた2人の名優の名が見られないのが何とも寂しい。昨年12月に18代目中村勘三郎、そして今年2月に12代目市川団十郎が相次いでこの世を去って、歌舞伎界も今難しい居面に立たされている。これを若手がどう乗り切って新しい歌舞伎を創り上げ発展させていくことができるだろうか。向こう1年間は杮落とし公演であるが、5月に新歌舞伎座での半世紀ぶりの観劇を楽しみにしている。